窓の向こうは高い石垣が続いていて、磨りガラスの先には冬が始まったばかりの灰色の空と、名もなき草花のシルエットが見えるだけ。店内にはシューベルトのピアノトリオが静かに流れている。それに柱時計のチクタク音と、時折、近くを通る電車の通過音がうっすらと重なる。静かな時間をお過ごしください、と店先の黒板に書かれてあった。案内されたのはミシン台を加工した飴色の一人用テーブル。アンティークなランプのスイッチを捻って文庫本の続きを読む。鳥のさえずりを解することのできる人の話だ。
この店は古いアパートメントの一階にある。アパートメントは二階建てでそれぞれの階に四部屋ずつ、計八部屋が寄り添い重なり合っている。屋上にはりっぱな給水塔が置かれている。まるで映画「バグダッド・カフェ」に出てきたタンクみたいに。

Elmar 90mm f4 (triplet) + MM (CCD)






