naotoiwa's essays and photos

カテゴリ: lens

maria

W-Nikkor 35mm f2.5 (S mount) + M10-P


 今まであまり50〜60年代のニコンレンズを使うことはなかったけれど、世間でよく言われるところの「開放では柔らかいけど乾いている」感じ、わかるような気がする。




 かれこれオールドレンズ&カメラ歴もずいぶんと長いので、ほとんどのレンズに関してはその種類や特性についてそこそこ詳しいと思っていたが、先日、久しぶりに中判のローライフレックスに120フィルムを入れて撮影した後、書籍等でレンズ構成を改めて確認していて思いがけない発見をした。
 十数年前、ご多分に漏れず私もローライのレンズはプラナーかあるいはクセノタールかでさんざん迷い、けっきょく両方買ったクチであるが、その違いはハッキリ言って未だよく分からない。プラナーの方がやや全体的に柔らかいかな? クセノタールの方がやや線が細くて精緻な感じかな? ぐらいのものである。
 それよりも同じ中判用プラナー80mmF2.8なのに、ハッセル用のプラナーとローライのプラナーの違いの方が顕著に感じられる。ハッセル用のプラナーは後ボケも綺麗で柔らかくまさにポートレート向きであるが、ローライの方は中央の解像度は高いが周辺の収差が割と大きくてその分絵画的で面白い。いずれにしてもこの両者、同じ名前で同じ焦点距離同じ最小絞りのレンズには感じられないのである。
 で、よくよくレンズ構成を調べてみたら、ローライのプラナーは定番のダブルガウス型とは言い難い。後群がトボゴン型なのである。(*ちなみにこれは80ミリに限ってのことで75ミリの方は通常のダブルガウス型)前群がダブルガウス型で後群がトボゴン型、つまりはこれ、クセノタール型なのである。要するにローライ用80 ミリのプラナーとクセノタールは、ほぼ同じレンズ構成だったのである。これではプラナーとクセノタールで写りにあまり違いが感じられなくて当然であろう。

 さて。半分がトボゴン型と知って腑に落ちた。ローライの80ミリの写りが好きな理由。どこかちょっと危ういのだ。破綻する予感が片隅に漂っている。そんな全体の雰囲気の中で、フォーカスしたい対象物だけが浮きあがるように写る。

planar

Planar 80mm f2.8 of Rolleiflex 2.8E2 + Delta400

 教訓。いずれにしてもレンズ名はあまり鵜呑みにするべきではないということだろう。名前はプラナーでもその実はクセノタール型だったということだ。戦前のビオゴン35ミリも名前はビオゴンだがその実はゾナー型である。オールドレンズはまだまだ奥が深い。



 現在、オールドカメラ&レンズ断捨離中。ふだん使わないものを潔く処分して、今後も使い続けていきたいものだけ残す、あるいは本当に自分が好きなものに買い換える。
 で、ブラコンなのである。ブラザーコンプレックスのことではない。ブラックコンタックスである。天の邪鬼な私は、ライカよりもコンタックスのカメラとレンズに心引かれる。なかでも最初のレンジファインダーカメラであるコンタックスⅠ、通称ブラコン。

 改めて、このブラコン、なんともマニアックなカメラである。操作しづらい。なんでここに巻き上げノブがあるの? どうしてシャッタースピードの設定にこんなお作法が必要なの? でも、測距の基線長がライカに比べて断然長くて正確だし(その代わりいつも右手で距離計窓を塞いでしまいがちなのだが)、リボンを使った縦走りシャッターの感触がタマラナイ。

 若い頃から何度も使ったことのあるカメラだが、最近になってこのブラコン病がまた再発にしてしまっている。でも、なにせ90年も前のカメラで、なおかつこれほど複雑な機構のため、完調な個体に巡り会うことはますます困難を極めている。販売する方も保証期間に故障が頻発すると商売にならないのであろう。ブラコンの修理をこなせる職人さんもかなり減ってきたと聞く。2022年の今、再び実用に耐え得るブラコンを入手することはなかなか至難の業である。高速シャッターのムラはないか(リボンの左右ともがきちんと正しいサイズのモノにしてあれば問題は起きないそうだ)、ネズミ鳴きの低速シャッター時に光線漏れはないか、二重像の縦ズレはないか、などなど、クリアしなくてはならいポイントがいくつもある。

 ということで、現在手元にあるブラコンは最初期の1932年のもの(ver2)。ネズミ鳴きのスローシャッターは付いていないが、その分カメラ自体の重量も軽く、これなら気軽に毎日持ち歩ける。このブラコンに基本中の基本の同年代のテッサー5cm,f3.5を付けて撮影。

snake

Tessar 5cm f3.5 (C mount pre war) + ContaxⅠ + XP2 400

tower

FED 28mm f4.5 + α7s


 色味も独特なアンバー色。フェド28ミリ。




 仕事でも趣味でも、今までいろいろなカメラとレンズを使ってきたが、その中でもやはり一番厄介というか難儀したのはハッセルのSWCではないだろうか。(三十代に何年か、そして最近になってまた79年製のSWCを使用している)

 特殊なカメラというかレンズである。ご承知のようにビオゴンレンズのためだけにボディが存在しているこのカメラは広角38ミリ(35ミリ換算で21ミリ)。露出計なし、距離計なし。目測であることもかなり厄介ではあるが、超広角なのに周辺の歪曲がほとんどなく極めてシャープな写真が撮れるというその評判の高さこそがストレスになっているのではないかと思うのだ。というのも、そうした評判ほどの写真が実際のところはなかなか撮れないからである。自分の腕が悪いのか、それとも個体の状態が悪いのか。周辺は結構歪むし、どんなに絞り込んでパンフォーカスにしても遠景のシャープさは今ひとつ。購入したお店のご好意で個体のレンズ調整をお願いしたりもした。で、何度も試写し試行錯誤していろいろ悩んだ末の現在の結論は以下の通りである。

 1)いかに神レンズのビオゴンであろうとも、完璧に上下左右とも1ミリの傾斜なく構えないことには確実に歪む。
 2)いかにTコーティング付きのビオゴンがシャープといえども、所詮は1970年代のオールドレンズ。現代のレンズでデジタルの数千万画素のセンサーで写ったものと比較するのは意味がない。

 その境地に達したところで改めて浮遊し続ける水準器に目を凝らして(ほとんど船酔いしそうになりながら)撮影したのがこの写真である。歪みほどんどなし、周辺まで柔らかくもシャープ。こうした写真が12枚のうちに1枚ぐらい撮れる。この不確実さ、でも一枚はアタリの写真が撮れる奇跡が起き得ることがハッセルのビオゴンが神レンズ&カメラである所以なのではと。

SWC

Biogon 38mm f4.5 of SWC + Portra120



 高速シャッターでムラが出てきたのでM4をオーバーホールに出した。6年ぶり。もともとはウィーン郊外の中古カメラ店で購入したこのM4、もう使い始めて二十年ぐらいになるだろうか。35ミリレンズで撮るには最適なファインダー倍率、露出計が付いてないから後玉が飛び出ているエルマリートの9枚玉やスーパーアンギュロンもストレスなく付けられる。バルナックやM3に比べればフィルム装填もやはり簡単で便利だ。

 高速の1/1000シャッターが復活したところで、ズミルックス35ミリを最小絞りにして撮影する。この柔らかさと滲みと光の捉え方は、やはりフィルムならでは、そしてズミルックスならではだと思う。

curtain

window

Summilux 35mm f1.4 2nd + M4 + XP2 400

neu

Sonnar 8.5cm f2 + Contax II + Delta400


 旧コンタックス用のツアイスレンズ、特に戦前のものは、空気中に漂う光の温気、あるいは雲気(?)みたいなものを映し出してくれるような気がする。







 ここ二〜三年、ヴィンテージカメラ・レンズの高騰ぶりは凄まじい。特にライカはどれも数年前と比べて軽く1.5倍から2倍に跳ね上がっているのではないだろうか。ということでライカには全く手が届かず、ではコンタックスはというと、こちらもライカほどではないが値上がりが半端ない。ブラコンも程度のいい物はいつの間にか10万を下らなくなってしまった。ということで、今やライカもコンタックスもリーゾナブルな値段で買えるのは外付けファインダーや距離計といった類いのものばかりで、でも、そうしたアクセサリーにこそカメラやレンズ本体よりもヴィンテージらしい「工芸」の味があると思うのだが。

 さて、今回購入したのは戦後のコンタックス用のコンタメーター(CONTAMETER)である。これは40.5ミリのレンズにプロクサーを取り付けて接写するためのもので、距離別に50センチ、30センチ、20センチと三種類用意されている。で、このコンタメーターが実によく出来ているのである。ダイヤルを切り替えて距離を選ぶと傾斜が変動してパララックスを自動的に調整してくれるのだ。そして、そのメタリックな勇姿がなんともカッコいいのである。

 では、ちょいと記念写真。ややこしいが、戦後のContax Ⅱaの後塗りブラックのアクセサリーシューにコンタメーターを装着、レンズは戦中のイチゴゾナーでその先端にProxarの50センチが付いている。この被写体を、アメデオアダプターでMマウントに変換したコンタックスコピーのジュピターの先端にProxarの20センチを付け、デジタルライカで接写撮影してみたのがこちらの写真です(!?)。

contameter

Jupiter-8M 50mm F2 + contameter proxar 20 + M10-P



 年齢を重ねるにつれ、世界を見る画角が狭くなっていく。写真家の高梨豊さんはレンズの焦点距離と年齢の関係について興味深い説を唱えていたらしい。60歳のひとには焦点距離60ミリあたりのレンズあたりが相応しいとのこと。でも、そう言われると天邪鬼な私は俄然反対のことがしたくなる。最近よく使うレンズは、広角・超広角ばかり。エルマリート28ミリ、ビオゴン21ミリ、スーパーアンギュロン21ミリ、ルサール20ミリ。年齢換算すれば20歳から28歳向けのレンズということになろうか。

 望遠で切り取れば余計な物は写らない。さすれば精神も安堵するというものだ。でも、予期せぬものがノイズとしてどこかに写り込んでいるかもしれないからこそ世界は面白いのではないか。きちんと結像して見えるのは中央の部分だけかもしれない。周辺部は滲み、ぼやけ、歪み、流れているかもしれない。
 それでも、ひとはパースペクティブに世界を見つめ続けないとダメだと思う。そう自分に言い聞かせつつ、今日も、シャッター幕にレンズガードが抵触しないかとオドオドしながら、後玉が突き出た対称系のレンズをカメラのマウントに取り付けてみたりする。ま、後玉フリークなだけという説もあるがw

21ミリ

Super Angulon-R 21mm f3.4 + α7s + Color Efex Pro

家

Biogon 3.5cm f2.8 (pre war) + contax II + ILFORD XP2


 例えば、こうした写りは古い zeiss レンズならでは。
 シャドウのみならずハイライトの階調も繊細で美しい。




 

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