naotoiwa's essays and photos

カテゴリ: lens



 高速シャッターでムラが出てきたのでM4をオーバーホールに出した。6年ぶり。もともとはウィーン郊外の中古カメラ店で購入したこのM4、もう使い始めて二十年ぐらいになるだろうか。35ミリレンズで撮るには最適なファインダー倍率、露出計が付いてないから後玉が飛び出ているエルマリートの9枚玉やスーパーアンギュロンもストレスなく付けられる。バルナックやM3に比べればフィルム装填もやはり簡単で便利だ。

 高速の1/1000シャッターが復活したところで、ズミルックス35ミリを最小絞りにして撮影する。この柔らかさと滲みと光の捉え方は、やはりフィルムならでは、そしてズミルックスならではだと思う。

curtain

window

Summilux 35mm f1.4 2nd + M4 + XP2 400

neu

Sonnar 8.5cm f2 + Contax II + Delta400


 旧コンタックス用のツアイスレンズ、特に戦前のものは、空気中に漂う光の温気、あるいは雲気(?)みたいなものを映し出してくれるような気がする。







 ここ二〜三年、ヴィンテージカメラ・レンズの高騰ぶりは凄まじい。特にライカはどれも数年前と比べて軽く1.5倍から2倍に跳ね上がっているのではないだろうか。ということでライカには全く手が届かず、ではコンタックスはというと、こちらもライカほどではないが値上がりが半端ない。ブラコンも程度のいい物はいつの間にか10万を下らなくなってしまった。ということで、今やライカもコンタックスもリーゾナブルな値段で買えるのは外付けファインダーや距離計といった類いのものばかりで、でも、そうしたアクセサリーにこそカメラやレンズ本体よりもヴィンテージらしい「工芸」の味があると思うのだが。

 さて、今回購入したのは戦後のコンタックス用のコンタメーター(CONTAMETER)である。これは40.5ミリのレンズにプロクサーを取り付けて接写するためのもので、距離別に50センチ、30センチ、20センチと三種類用意されている。で、このコンタメーターが実によく出来ているのである。ダイヤルを切り替えて距離を選ぶと傾斜が変動してパララックスを自動的に調整してくれるのだ。そして、そのメタリックな勇姿がなんともカッコいいのである。

 では、ちょいと記念写真。ややこしいが、戦後のContax Ⅱaの後塗りブラックのアクセサリーシューにコンタメーターを装着、レンズは戦中のイチゴゾナーでその先端にProxarの50センチが付いている。この被写体を、アメデオアダプターでMマウントに変換したコンタックスコピーのジュピターの先端にProxarの20センチを付け、デジタルライカで接写撮影してみたのがこちらの写真です(!?)。

contameter

Jupiter-8M 50mm F2 + contameter proxar 20 + M10-P



 年齢を重ねるにつれ、世界を見る画角が狭くなっていく。写真家の高梨豊さんはレンズの焦点距離と年齢の関係について興味深い説を唱えていたらしい。60歳のひとには焦点距離60ミリあたりのレンズあたりが相応しいとのこと。でも、そう言われると天邪鬼な私は俄然反対のことがしたくなる。最近よく使うレンズは、広角・超広角ばかり。エルマリート28ミリ、ビオゴン21ミリ、スーパーアンギュロン21ミリ、ルサール20ミリ。年齢換算すれば20歳から28歳向けのレンズということになろうか。

 望遠で切り取れば余計な物は写らない。さすれば精神も安堵するというものだ。でも、予期せぬものがノイズとしてどこかに写り込んでいるかもしれないからこそ世界は面白いのではないか。きちんと結像して見えるのは中央の部分だけかもしれない。周辺部は滲み、ぼやけ、歪み、流れているかもしれない。
 それでも、ひとはパースペクティブに世界を見つめ続けないとダメだと思う。そう自分に言い聞かせつつ、今日も、シャッター幕にレンズガードが抵触しないかとオドオドしながら、後玉が突き出た対称系のレンズをカメラのマウントに取り付けてみたりする。ま、後玉フリークなだけという説もあるがw

21ミリ

Super Angulon-R 21mm f3.4 + α7s + Color Efex Pro

家

Biogon 3.5cm f2.8 (pre war) + contax II + ILFORD XP2


 例えば、こうした写りは古い zeiss レンズならでは。
 シャドウのみならずハイライトの階調も繊細で美しい。




 

foxes

Planar 80mm f2.8 of Rolleiflex 2.8E2 + Pro400H


 久しぶりにローライのプラナー。やっぱりクセノタールより柔らかいというか、空気感が雲気(?)のように映る、ような気がする。



maria

M-SYSTEM G.Zuiko Auto-S 50mm f1.4 + M-1 + Lomo100


 OM-1だろうと M-1だろうと、OM-SYSTEM だろうが M-SYSTEM だろうが、きっと違いなんてないのだろうけど、ま、気分ですから。初期型ですから。ちょっとは稀少でしょうから。
 年代が古い分(1972年)、光学的な状態はあまりいいとはいえないのだけれど、このM-SYSTEMの標準レンズの写り、けっこう好みである。開放にするとかなり柔らかい。そして、滲む。




 ずいぶん前から(かれこれ30年ぐらい)オールドレンズフリークであるが、最近(ここ5年ぐらい)はまったく食指が動かない、というか、動かせない。ライカを筆頭にオールドレンズ群が法外なまでに値段が上がってしまったからだ。例えば、いつか買おう(いつでも買えるさ)と思っていたズマリットクラスが最近では10万超えも当たり前。うーん、あの時買っておけばよかった、5万出せば美品レベルが手に入ったのにというのは、もうあとの祭りである。

 ゆえに今までに集めたレンズを幾久しく愛で続け使い続けるしかないわけであるが、改めてコレクション(というほどのものではないが)をチェックしてみると、なんともまあ、マイナーでマニアックなものばかり。ほとほと自分でも呆れるばかりである。

 例えば、これ。ライカのRレンズの広角なんだけれど、ふつうの人はこのひとつ後の世代のレトロフォーカスのものを買う。1964年に発売され4年で製造打ち切りになったF3.4なんて絶対に買わない。なぜなら、このレンズ、後玉が大きく突き出ていて、カメラのセンサーに接触してしまう。フィルムカメラで使うにしたって、初代のライカフレックスでミラーアップするしか術がない。なんとも使い勝手が悪すぎるレンズである。

 幸い、α7sだとLR-LMアダプターを付けてなんとかギリギリ(お尻スレスレ)であるが、露出計はうまく機能しないし、周辺部は流れて光量もかなり落ちる。中心部だってお世辞にも解像度が高いレンズではない。

 でも、それでいいのである。それが、いいのである。オールドレンズファンが望んでいるのはピクトリアルな写真なわけで、カリカリに解像度が高くて歪みのない写真になんて興味ないからオールドレンズを使うわけで、そういう意味では、この Super Angulon-R 21mm f3.4もかなり気に入っているレンズのひとつである。初期のRレンズは黄色味がかった発色で、フルサイズのセンサーで写すとシネレンズみたいに収差が出てヴィネット効果もすごい。お決まりのセリフであるが、まるで夢の中の風景みたい。と、うっとりしつつ、恐る恐るヘリコイドを回す私。(無限遠が怖い!)

外浦海水浴場

Super Angulon-R 21mm f3.4 + α7s



 もうかれこれ二十年ほど、オールドレンズを蒐集して仕事に使ったりしている。ここ十年はオールドカメラ&レンズはけっこうなブームみたいで、ライカレンズをはじめとした海外ブランドモノは値段が高騰してオイソレとは買えないが、たまに格安の掘り出し物を見つけたりするとついつい買い足してしまう。で、そのほとんどが曇り玉である。

 中古カメラ店で「お客さん、その玉、スレ傷は多いけど曇りやカビはなくてスカッと抜けてるよ」などというセールストークをよく聞く。でも、そういうのはノーサンキューなのである。スレ傷はご勘弁。でも、曇りならばオーケー。何度もレンズクリーニングをしてその度に中玉にガサツなスレ傷ができているものよりも、一度もクリーニングしてなくて全体にぼんやりと白く曇った玉が好みなのである。

 スカッとクリアなレンズならば現代のレンズを買えばいい。オールドレンズは実用品ではあるけれど、やはり骨董。経年変化を素直に受け止めその風情を味わえばいいのだ。

 例えば、この1946年製のズミタール。戦後のものなのでコーティングもかかっているが、どうやら一度もレンズクリーニングには出されていない模様。それどころかあまり使われてなかったらしく、そのせいか鏡胴はピッカピカ。前玉のスレ傷も皆無。そのかわり中玉がしっかりと曇っている。逆光で撮れば紗がかかったようになる。ぜんぜんクリアじゃない。でもそれゆえにドリーミーな絵に仕上がる。粗であることを楽しめるのだ。そして、格安なのである。

紗

Summitar 5cm f2 + M9-P



 ま、今の世の中、大概のことは検索すれば情報が出てくる。

 例えば、この昔のオリンパスペン用のズイコーレンズ。リアキャップがなかなか見つからない。見つかっても数千円の値段がついていたりして、それならこの100ミリのレンズがもう一本買えてしまう。で、検索してみると、こんな情報がヒットする。明治乳業の瓶のプラスチックの蓋がドンピシャのサイズですよ、と。

珈琲牛乳

G-Zuiko Auto-S 40mm f1.4 + E-P5


 で、さっそく、近所の老舗の食品店に行ってみると、ありました。明治のコーヒー牛乳。銭湯の湯上がりに飲みたくなるヤツです。一本100円。ゴクゴクと飲み干してキャップの蓋を洗ってレンズのリアに填めてみると、はい、確かにドンピシャリ。

 100円で懐かしのコーヒー牛乳が飲めて、これで古いペン用のレンズも後玉を傷つけることなく保管することが出来るようになりました、というお話。

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