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桃の節句
今日は3月3日、雛祭り。桃の節句である。旧暦の3月3日頃、あと一ヶ月もすれば、桜も桃も満開になるだろう。春爛漫の季節である。
さて、桃の花といえば、太宰治。中原中也に「ええ? 何だいおめえの好きな花は」と聞かれて、太宰が「モ、モ、ノ、ハ、ナ」と答えたという有名なエピソードが檀一雄の『小説 太宰治』の中に描かれている。
檀一雄 『小説 太宰治』『檀一雄全集 第7巻』(沖積舎、1992年)p.25を参照
同じ無頼派でも坂口安吾は桜に惹かれて傑作『桜の森の満開の下』を書いた。桜か桃か、あるいは海棠か。春の花の好みは尽きない。
そして今日は亡母の誕生日でもある。女子力満載(?)だった母に相応しい誕生日だったのかも。
山桜
梅林
bamboo shoot
sakura
もうそろそろ、でもまだまだ
近所に素敵な花屋さんがある。店の前に小さな黒板が置いてあって、白いチョークでそこに季節の歳時記の言葉が書かれている。その言葉がいつもとても柔らかい。前を通る度に心が和む。例えばこんな感じだ。「明日は冬至です。一年で一番日が短い日です。でも、それってつまり、これからはどんどん日が長くなるってことですよね?」
で、今週。店の前を通ったら、「もうすぐ大寒ですね。でも、木々も確実に芽吹いてきました。もうそろそろかな。でもまだまだかな?」とあった。つられてブーケをひと束買った。

Lumix G Macro 30mm f2.8 + GM1
春は待ち遠しい。でも、このままずっと冬が続くのも悪くはない。春生まれの、でも冬が大好きな自分にとって今はとても複雑な気分である。まさに、もうそろそろ。でもまだまだ。…
ちなみに、T・S・エリオットの「荒地」の出だしは有名なこんな文章から始まる。
四月は最も残酷な月、死んだ土から
ライラックを目覚めさせ、記憶と
欲望をないまぜにし、春の雨で
生気のない根をふるい立たせる。
冬はぼくたちを暖かくまもり、大地を
忘却の雪で覆い、乾いた球根で、小さな命を養ってくれた。
「荒地」T・S・エリオット 岩崎宗治訳