カテゴリ: snow
雪の街
雪景色
bonne année 2022
冬景色
雪の町
今年の雪不足は深刻だ。先日新潟に行った時も、地元のお年寄りの人たち曰く、山間部で例年の三分の一、町中では十分の一。雪かきをする必要がなかった年は自分の長い人生の中でも他にほとんど記憶がない、とのこと。
長野もしかり。志賀高原の山の駅を過ぎて、志賀第一トンネルにさしかかる時、頭上をジャイアントスキー場のペアリフトが横切っていく。例年ならこのあたりからは本格的な雪景色のはずなのだが、今年はここまで来ても路面はドライなグレー色。
今年だけの例外ならばいいのだけれど、地球温暖化がものすごい勢いで進んでいる気がする。このまま、この国から雪景色が消えてしまったら、と考えたところで気が滅入ってしまった。亜熱帯気候の日本、台風ばかりの日本。冬がなくなってしまった日本。
夢の中で、僕は、昔ながらの古風なホテルの一室で、スチーム暖房のシューシューという音を聞きながら、窓の向こうの月明かりに青白く光るゲレンデを眺めている。夢の中で、僕は、凜とした空気の中、「さくさくさく。」と新雪を踏みしめている。
GR 18.3mm f2.8 of GRⅢ + Color Efex Pro
フローズン!
連日35度以上。日中は10分も歩けば全身の毛穴から汗が吹き出す。日が落ちてからも風は吹かない。この猛暑、いつまで続くのか。
昨日、そんな猛暑の中で屋外でテニスをした自分が悪いのだけれど、ポリエステル100%の速乾Tシャツも数分で汗だくになり肌にべったり貼り付いたまま。湿度80%。いくら冷たいドリンクを飲んでも体温が下がらなかった。
今週からそろそろ夏休みだし、避暑地に逃避しようとも思うのだが、今年の夏に限っては避暑地などというなまやさしいレベルでは解消しそうもない。いっそのこと、一足飛びに明日から真冬になってくれたらと思う。真冬のニセコか安比高原で全身フローズン状態に包まれたいと切に願う。その願望を現実にかなえるとすれば、いますぐ南半球に行くしかない。ということで、結構マジでニュージーランドのスキー場の積雪状況を調べていたりする自分がいる。
クィーンズタウンは気温マイナス5度か。フムフム。
whiteout
待っている
改札を抜け3番線のプラットホウムに降り立ってみたものの、列車が到着するまでにはまだ10分ぐらいあるようだ。雪が降り続いている。50メートル先が見えない。改札の案内表示に「今の気温:ー10度」と出ていた。ホウムにこじんまりとつくられた待合室はすでに満員である。
「次の3番線下り列車は3両編成で参ります。足もと1番から9番までの番号表示のところでお待ちください」とアナウンスが聞こえているが、積雪で番号表示を確認することはできない。おそらくは進行方向に向かって先端あたりに停車するのだろうと勝手に推測し、ダウンジャケットのフードを被り直しマフラーをぐるぐる巻きにして、待合室のあるエリアを通り過ぎていく。
ふと雪の匂いがした。ツンとして、でもどこか懐かしいような。雪に覆われた地面の奥底の、甘い土の匂いがほんの少しだけ混ざっているような。
ホウムの先端に、女の人が立っていた。ひとりでずっとそこで、列車が到着するのを待っている。近づいていくと次第に彼女の姿のディテイルが見えてくる。背中まで伸びた長い髪。真っ赤な手袋をしている。紺色のダッフルコートを着ている。そして、ダッフルコートの脇に、おそらくはその中にヴァイオリンが隠されているだろうケースを抱えている。音楽教室の練習帰りだろうか。
彼女の隣に並ぶ。こっそりと横顔をうかがう。真っ白な肌、寒さのせいで頬に赤みが差している。そして、大きく前を見据えた瞳。眉のところで切りそろえた前髪。
イヤホンを耳に付けている。そこから少し音漏れがしている。クラシック音楽。たぶんシューベルト。弦楽四重奏。転調をめまぐるしく繰り返している。
と、その時、突風が我々の顔をめがけて襲いかかってきた。彼女の長い髪がメドューサのように束になってグルグルと宙に舞う。頬の赤みと口紅の赤、そして手袋の赤がバラバラの断片になる。その背景で、雪片が青白くキラキラと光っている。