naotoiwa's essays and photos

カテゴリ: camera



 大好きな吉田篤弘さんの小説『つむじ風食堂の夜』(映画のロケ地函館にも足を運んだ。食堂のモデルとなったJOEカフェとか来々軒とか、月舟アパートメントの旧ロシア領事館とか)の中に、ふたつの机のくだりがある。


 屋根裏部屋にはふたつの机がある。ひとつは<雨の机>。もうひとつは<その他の机>と名付けている。(中略)向かって右を<雨の机>とし、そこでは、積年のテーマである「人工降雨」に関する研究をしたためることにした。(中略)向かって左の<その他の机>。その机で私は、およそありとあらゆる雑文を請け負っては書き続けていた。

吉田篤弘『つむじ風食堂の夜』(ちくま文庫、2005年)


 この<雨の机>と<その他の机>を意識しているわけでもないが、私の場合は<雨のカメラ>と<その他のカメラ>である。朝起きてシトシトと雨が降っていたりすると、頭の中の襞も潤って持病の偏頭痛も収まり、さあて、今日はどの雨靴を履いていこうか、どんなコートを羽織ろうかと心ときめいたりするのであるが、そうした雨の日の外出には必ず<雨のカメラ>も持参する。雨の日専用カメラといっても防水加工が施されている最新のカメラではなく、古い1960年代のオリンパスPen Fである。ハーフサイズカメラで36枚撮りのフィルムを入れると合計72枚の縦長写真が撮れる。これにやや高感度のISO400のフィルムを入れ、やや望遠気味の明るい40mmのレンズを付けて、映画のシナリオを絵コンテで描くように雨の日のストーリーを気の向くまま無造作に紡いでいくのだ。

rain

G-Zuiko Auto-S 40mm f1.4 + Pen F +Kodak400


 小さい頃から雨が好きだった。空全体が乳白色に包まれ天から水滴が落ちてくる「奇跡」。それに引き換え、なんのフィルターも通さず太陽光を直接浴びせられる雲ひとつない日は、今でも少し怖いままである。

contax

Summilux 35mm f1.4 2nd + MM


 my favorite contax Ⅱ & Biogon 3.5cm (pre war)


foxes

Planar 80mm f2.8 of Rolleiflex 2.8E2 + Pro400H


 久しぶりにローライのプラナー。やっぱりクセノタールより柔らかいというか、空気感が温気のように映る、ような気がする。





 ジャンクカメラ&レンズを数千円で買ってしまった。といっても、外観も機関も新品同様。殆ど未使用のまま30年余、どこかに埋もれていたらしい。でも、カメラの価値としては現在ではほとんどゼロに等しい代物だ。キヤノンの一眼レフEOS630ズームレンズ付き。発売は1989年。

 昔々、バブル真っ盛りの頃にこのカメラを買ったことがある。若い頃から機械式のマニュアルカメラが好きで、こうしたオートフォーカスのプラカメ一眼レフには基本的に興味がなかった自分が、二十代の最後にこのカメラだけは買った。理由はEOS630のCMに使われていた曲がシルヴィ・バルタンの「Irrésistiblement(邦題:あなたのとりこ)」だったからだ。中学生の頃からシルヴィ・バルタンに憧れていたカメラ少年が、三十才になる直前に広告に惑わされて(?)EOS630を買い、これにポジフィルムを詰めて鎌倉中のいろんな場所を巡った。

 あれから三十年。ずいぶんと久しぶりにフィルムをEOS630に入れファインダーを覗き、シャッターボタンを押してみた。オートフォーカスの「ピ、ピ、ピッ」という音はうるさいけど、見かけの割にとても軽くて(さすがプラカメ!)スピーディに撮れることこの上ない。途中でフィルムを巻き上げたくなった場合もボタンひとつでOK。

red shoes

EF50mm f1.4 + EOS630 + Fuji100






彫像

Zuiko-S 40mm f1.4 + Pen F + Kodak200


 久しぶりにハーフサイズカメラ&レンズで。








 今まではあまり気に留めたことがなかったのだけど、最近、フランスのライカ風レンジファインダーカメラの FOCA が気になってしかたがない。初期のものはスクリューマウントで(ライカのスクリューとは径が違う)レンズ交換が可能だが、50ミリの標準レンズしか距離計が連動しない。シャッターダイヤル兼用の巻き上げノブは一回転半ぐらいグリグリと回さなければならず、おまけにノブの表面形状がソリッド過ぎて指先が痛くて皮が剥ける。使いにくいことこの上なし。けれど、カメラ全体のデザインがバツグンに垢抜けているのだ。フランス1960年代のモダンデザイン。

FOCA


 そしてなにより、標準で付いている50ミリのOplar 50mm f2.8、計ったら100グラムにも満たないこの軽量アルミのレンズの写りがなんとも味わい深い。彩度低めのクールトーン、色相も光線の加減によって青みがかったり黄色がかったりで、久々にフィルムで撮っていて楽しくなるレンズである。

仁王

Oplar 50mm f2.8 + FOCA PF3 + Fuji100


 デジタルでも是非使ってみたいのだが、あいにくFOCAのマウントアダプターはメジャーなメーカーからは市販されていない。

 FOCA。ライカに較べれば工作的な精度はずいぶんと落ちるのだろうけれど、カジュアルにユルく使いこなしたい洒落たフレンチカメラである。残念ながら日本にはあまり個体が入ってきていないようで、状態のいいものに巡り会えるチャンスが少ないのだけれど。



 オールドカメラ&レンズファン歴も、かれこれ四十年。かなりヘンクツなタイプなので、二眼のローライも、他の人が持っていない(実用性がなくて持とうとも思わない)ものばかりが手元にある。(値段も安かったし、、)
 例えば、ベビーローライばかりが三台もあるのだ。127フィルム専用である。大丈夫、今でもちゃんと127フィルムは手に入る。現像を引き受けてくれる店もある。スキャンするときのフィルムフォルダーも自作した。
 所有しているのは、まずは、戦後のベビーローライ。ただし定番のグレーではなくブラックタイプ。1963年製。レンズはクセナー。それに加えて戦前のものが二台。一台目は最初期のtype1、1931年製。ロゴがクラシックでとにかく格好いい。ローライスタンダードの原型となったデザインだ。レンズはテッサーのf3.5。そしてもう一台は、通称スポーツと呼ばれるtype4で、1938年製。ロゴが浮彫になった。こちらは同じテッサーでもf2.8。
 完璧な写りを狙うときは戦後のものを使う。でも、これ、けっこう重くて680グラムもある。サイズはノーマルなローライに比べれば小さいが、重さはローライコードとたいして変わらない。で、最近は戦前のものを持ち出すことが多い。type1は490グラム、type4でも540グラム。35ミリのカメラよりもコンパクト。でも、4×4判だから解像度は圧倒的に高い。
 とはいえ、さすがにどちらも1930年代のもので、レンズのコーティングも痛んでいるし、フィルム装填も赤窓で番号を確認するタイプ。取り扱いはかなりやっかいではあるが、古い時代のテッサーはシャープさの中に柔らかさがあって、デジタルでは再現できない妙な「色気」を感じる。

 カバンの片隅に戦前のベビーローライをちょこんと忍ばせての散歩が好きである。

幹

Tessar 60mm f2.8 of Baby Rollei type4 + rerapan400



 最近は、とんとオールドカメラ&レンズを購入する機会もなくなったが(ライカを筆頭に値段が高騰しすぎで手も足も出ない)、アクセサリーの類いだけは細々と集め続けている。特に外付けファインダー。ライカもツアイスも、はたまたフォクトレンダー名のコシナのも、みんな工芸品のような造りであり、そしてなにより、覗いた時の世界の見え方がカメラに内蔵されたファインダーとは別格なのである。シャッターを切る必要を忘れてしまうくらい、ただただファインダー越しにこのまま世界を眺め続けていたい気分になってしまう。

 でも、ローライのような二眼レフだけは別。二眼の良さは、あの上から覗く左右逆転のウエストレベルファインダーにある。それをわざわざプリズムファインダーに取り替えて、というのは今まで発想したこともなかったのだが。

 馴染みの中古カメラ店で、かなりきれいなプリズムファインダーを見つけてためしに付けてみたところ、これがまあ、よく見えるのである。大きなスクリーンでビシッとピントを合わせられるのだ。やっぱり正像はいい。

 金属のカタマリでかなり重いし、デザインも頭でっかちのツッパリヘアースタイルみたいなのだけれど、それはそれでまたカワユクもあり、ということで、このところプリズムファインダーにすげ替えたローライ3.5Fがお気に入りなのである。

rollei

Dallmeyer 1inch f1.8 + E-PM1


ベス単

momo100 + α6000


 現代版ベス単フード外し。




 久しぶりにカメラの話である。

 ええっと、ライカにはちょっと飽きてしまった、なんて、恐れ多くて絶対に言えないのだけれど、例によってあまのじゃくなワタクシとしては、最近は、ライカの永遠のライバルだったツアイス、コンタックスの方にばかり惹かれるのである。

 戦後のモデルで比較的使いやすいと言われているコンタックス Ⅱa でさえ、持ちにくいし、シャッター音はうるさいし、距離計を合わせるダイヤルをコリコリ動かしていると指が痛くなってくるし。カメラ全体の洗練度はライカに比べると確かに落ちる。でも、縦走りのシャッターはシャキーンとしているし、付けるレンズのゾナーも、ズマールやズミタールよりも明るくてクリア、カラーでプリントすると明度も高い。悪くない、と思う。

 で、コンタックス。極めるなら、戦前の最初のモデルであるブラックコンタックス、通称ブラコンまで行き着くべきであろう。現在、程度のいいものをアレコレ物色中。幸いライカに比べればお値段はぐっとリーゾナブル。12月のボーナスのほとんどは教育費やら修繕費やら税金等に露と消えそうな状況の中、せめて、数万円(5万円未満です)ぐらい自分のために使ってもいいよね? (と、誰に向かって言っているんだろう)

 ちなみに、これは Ⅱa の後塗りブラック。偽ブラコンでございます。

contax


このページのトップヘ