東京の桜は現在五分咲きくらい。今年の東京の開花宣言は3月21日だった。例年より5日早く、去年より2日早かった。それを決めるのが標本木。各県ごとに桜の標本木を定め、その開花状況を係員が「目視」して行う。実は極めてアナログな手法である。デジタルテクノロジーの進化した現代ならばもっと他の方法もあっていいのではないかと思うのだけれど。

標本木

 で、東京の標本木はなぜか靖国神社内にある。気象庁が近くにあるからということらしいが、この標本木のすぐ近くには第二次世界大戦で使われた多数の兵器を展示している例の「遊就館」があるし、特攻兵士の像も建っている。正直言ってちょっと複雑な気持ちになる。…桜。ニッポン。

特攻兵士

 ソメイヨシノは種子を作らない。ほとんどが接ぎ木によるクローン増殖。遺伝子情報が一定しているからこそ、いっせいに咲き始め、そしていっせいに散る。そのことが全体主義的な象徴とされた原因になっているような気もする。でも、その人工性ゆえか、我々はソメイヨシノに脆弱でデカダンな美学を感じてしまう。やはり、あの薄墨色の危うさ、妖艶さ、華やかさ、そして冷たさはただものではない。。

all photos taken by Summilux 50mm f1.4 ASPH. + M9-P