naotoiwa's essays and photos

カテゴリ: travel


 
 どこに行っても外国人観光客ばかりである。相変わらずアジア系の方も多いが、最近では中国語、韓国語、タイ語、そして英語のみならずイタリア語やフランス語もたくさん飛び交っている。
 先日研究出張の帰りに少しだけ足を伸ばして広島で下車したのであるが(この時期には必ず読み返したくなる原民喜の「夏の花」の文庫本を携えて。菩提寺の円光寺にお参りしたり、妻貞恵と結婚式を挙げた鶴羽根神社を訪れたり、耐震工事中の被服廠跡に行ってみたり)、お決まりの平和記念公園に行った際、妙なデジャヴに(現実にその場所はあるのだからデジャヴではない)襲われた。そこはかつての自分がひとりイタリアやフランスに旅行をしていた時の風景にそっくりなのである。まわりはすべて地元や国内の田舎からやってきたイタリア人、そしてフランス人。飛び交う異国語。その中に東洋からのひとりの旅行者として自分が紛れ込んでいる。

 その店の前にはオレンジが山積みになっていて、川に面したテラス席には心地良い風が吹いている。席に着いてまずは店頭に並んでいたオレンジの手絞りジュースを注文する。美味しい。日本で市販されているものとは全然味が違うんだよなあ、ヨーロッパで口にするオレンジジュースはなんでこんなに美味しいんだろう……とまだまだヨーロッパに憧れを抱き続けている(あるいはコンプレックスを持ち続けている)数十年前の日本人に戻った自分が感激している。小腹が空いていたのでパスタを注文する。きれいに日焼けしたまるでロマーナのような女の子がオーダーを取りに来てくれる。じっくり時間をかけて作ってくれたイカととうもろこしのアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノもさすが本家本元の味である。眺めもいい。ここはテヴェレ川? 

orange

Summilux 35mm f1.4 2nd + M10-P


 ……というところで急に現実に引き戻される。ここは目の前が平和記念公園。旧太田川、元安川の河べりである。80年前、被爆した人たちが水を求めてたどり着いた阿鼻叫喚の場所なのである。。

しづか

Hektor 5cm f2.5 + Leica C + Kodak200


「酒は静かに飲むべかりけり」(牧水) @松本



空模様

Elmar 50mm f3.5 (early) + DⅢ + Ilford HP5 Plus 400


 昨日も秋にはときどきある、朝もひるも夕暮れのような空模様のまま夜になるとしぐれが来ましたが、(中略)じっと耳をすましてみますと落葉の音は聞こえません。ところがぼんやり読んでおりますとまた落葉の音が聞こえます。私は寒けがしました。この幻の落葉の音は私の遠い過去からでも聞えて来るように思ったからでありました。
川端康成『しぐれ』

川端康成『反橋/しぐれ/たまゆら』(講談社文芸文庫)p.24

見附島

Elmar 50mm f3.5 (early) + DⅢ + Ilford HP5 Plus 400


 traveling in Noto peninsula.


詩人の住む

Summilux 35mm f1.4 2nd + M10-P


 札幌は秋風の国なり、木立の市なり。おほらかに静かにして人の香よりは樹の香こそ勝りたれ。大いなる田舎町なり、しめやかなる恋の多くありさうなる郷なり、詩人の住むべき都会なり。

石川啄木「秋風記」より


pray

Summilux 35mm f1.4 2nd + M10-P


 @peace park


travelling

Nokton Classic 35mm f1.4 Ⅱ SC + M10-P


 now travelling.(研究出張中)




 コロナ禍に加え、ここ数ヶ月公私共々いろいろあってなかなか時間がつくれず、かといって次の論文の準備もしなくちゃならない。だとしたらこのタイミングしかないと久しぶりに超特急で研究出張に出掛けた。場所は山口。山口情報芸術センターの企画展示で見ておかなくてはならないものがたくさんあるし、山口と言えば中原中也の古里。記念館の過去のアーカイブから入手したい資料もたくさんある。ということで慌ただしく二日間が過ぎていくのであるが、瞬間空いた時間帯に昼食も兼ねて山口駅前の通りを歩いてみた。旅をしていての楽しみのひとつに何の予備知識もなく(ネット時代、この何の予備知識もなくというのが極めて困難なことではあるのだけれど)、自分の直感だけを信じてふらりと一期一会にいろんな店に入ってみることであるが、今回は、ネーミングに惹かれて二店ほど。

 ひとつは「月光カメラ」という名のフィルムカメラ店。古いローライフレックスが通りに面したショーケースに置かれている。はてさて名前の由来は月光菩薩か月光仮面か、ベートーベンかドビュッシーか(ちなみに今夜は部分月食が見れるかもしれない)、あるいはやはり印画紙の「月光」か。もうひとつは「もなの珈琲」。なんだろう、「もなの」って。けっきょくこの店でサラダ付きのクロックムッシュと珈琲のセットを頼んでしばし休憩することにしたのであるが、珈琲もパンも美味しく店の雰囲気も落ち着いていて直感は当たった。ただし、店名の「もなの」のヒントはどこにもなく(HP等を見れば出ているのかもしれないが)、名前の由来の謎はそのままに、店内に置かれている書籍やマンガ、雑誌の類いに目を通すとこれまたステキなネーミングのものばかり。「世界で一番美しい犬の図鑑」、そしてマンガの「スズキさんはただ静かに暮らしたい」が数巻置かれている。

 なんだか嬉しくなってしまった。時に世界は(あるいは神様は)偶然を装って、現在の自分の心境を的確に提示してくれるのだ。でも、「もなの」っていったいどういう意味なんでしょう? 

島巡り

Summilux 50mm f1.4 ASPH. + M10-P


 島巡り中。




 西伊豆の松崎を訪れるのは数十年ぶりである。

 ずいぶんと変わってしまっていた。……まずは、松崎プリンスホテルが、ない。立地と建物の構造はそのままだがまったく別のホテルに変貌していた。市内の長八美術館やなまこ壁通りは健在だが、向かいの伊那下神社の境内には不可思議な動物の木彫たちが所狭しと置かれている。

 国道15号線に沿って下田方面に移動してみる。町の名士である依田氏他の業績を展示する道の駅が出来ている。その先を左に折れると大沢温泉に着くはず。……ところが、あの大沢温泉ホテルが、ない。依田氏の末裔が江戸時代の建物を活かして作った松崎を代表する高級温泉ホテルだったのに。建物の一部は市に寄贈されて現在も見学可能とのことではあるが、数年前に廃業したらしい。そして、大沢荘も現在では露天風呂以外は営業していない。

 折しも桜の季節。変わっていないのは那賀川沿いに連なる桜並木だけ。桜祭りの名残の提灯が風に揺れている。。

那賀川

桜祭り

Summilux 50mm f1.4 ASPH. + M10-P

このページのトップヘ