naotoiwa's essays and photos

カテゴリ: food&drink



 池袋界隈はふだんの活動範囲ではないのだけれど、先日、東武東上線沿線に出かける用事があったので、かの梟書茶房に寄ってみた。オープンして二年ばかり。池袋駅直結Esolaビルの中にある。ま、流行のブックカフェなんだけど、ここ、売ってる本が全部袋とじなのである。題名も表紙も明かされず、ブックディレクター、編集者の柳下恭平さんのセレクト文章だけを読んで購入するしくみ。なるほどシークレットブック。本の阿弥陀籤とも言えるかも。蔵書は約1200冊。

 自分のようにかなりの本好きを自認している者にとっては、このシステム、正直言ってなんだかまどろっこしさも拭えないのであるが、時には自分の価値観から解放されて、まるごと他人のキュレーションに委ねてみるのも快感かもしれない。計画的偶発性というやつである。サイフォン抽出の珈琲もおいしいし(あのドトールが経営)、「アカデミックエリア」と称された場所はじっくりと腰を据えてひとりシェアオフィス的にも使える。

 美術本や稀少本は依然として紙の書籍の意味はあるけれど、電子書籍がスタンダードになりつつある今、小説やエッセイの単行本・文庫本が紙であることの価値を再創造する手立てとしてはアリだと思った。なにより楽しい。袋とじだから梟書茶房と言うのだそうなw (だったら、入っているビルの名前Esolaは、ひょっとして「絵空事」のことかと勝手に想像してしまう)

 誰かに本をプレゼントするのにはたしかにこの袋とじシークレットブック、いいかも。(でも、その際にはプレゼントする方としてはやはり、中身がなんなのか知ってはおきたいのだけれど)



 雑居ビルの一室、窓の向こうは細かな雨に煙っている。アスファルトの真っ黒な路に水溜まりができていて、そこに街灯のオレンジ色が滲んでいる。雑居ビルなのに、どこの部屋からも物音ひとつ聞こえない。誰ひとり声を上げたりする人もいない。
 ここで、僕は物語を書いている。夜と昼が逆転している街の話を書いている。あるいは、時間が特別に引き延ばされた真夏の夜の話を書いている。あるいは、何ヶ月も何ヶ月も雨の季節が続く話を書いている。

@月と六ペンス(京都)


月と六ペンス


ここのオーナーが作られたブックカバー、素晴らしいデザインです!
一枚いただきました。



 今朝NHKのニュースを見ていたら、愛知県のモーニングセットの話が紹介されていた。名古屋に行くと食生活の面でいろいろなカルチャーショックを受けるが(なぜにカツに味噌を? なぜにきしめんに味噌を?)そのひとつにモーニングセットのゴージャスさがある。コーヒーを注文しただけなのに卵もトーストもサラダも付いてくる。お豆やクッキーだって付いてくる。で、500円もしない。東京でこれらを注文したら軽く1000円は超えてしまうだろう。

 で、NHKニュースによるとこのモーニングセット、発祥は一宮市なんだそうである。繊維業が盛んだった一宮市は織物工場の騒音が始まる前の朝の時間、アパレルの関係者が喫茶店でさまざまな商談を行った。その際に店側がピーナッツやゆで卵を提供したのがその始まり、的なことがウィキペディアにも書いてあった。

 ああ、それで、とようやく合点がいった。小さい頃よく車で父親に喫茶店に連れて行かれ、そこで食事代わりのモーニングセットを食べた記憶があるのだが、なるほど、父親はまさにモーニングセット興隆の当事者だったわけだ。というのも、父親の職業は毛織物の卸業。毎日車で一宮や岐阜の街に出かけていっては仲買の商売をしていたのである。

 職業柄いつもダンディにしていた(というか、着倒れ人生?)あなたと、つもりに積もった話をするために、久しぶりに一宮市に行ってゴージャスなモーニングセットを食べたくなりました。今ならどこの店に行けばいいのでしょうか、ね?

fox

Dallmeyer 1inch f1.8 + E-PM1


 fox.


before

after

Summar 5cm f2 + Ⅱf + APX400


 今年最後のすいか。使用前、使用後。


金平糖

DG Summilux 15mm f1.7 ASPH. + GM1


 金平糖。


mikan

FE 55mm f1.8 + α7s


 みかん。




 久しぶりに吉祥寺南口の(というか井の頭公園入口近くの)武蔵野珈琲店に行く。古い雑居ビルの2階にある。ドリップ珈琲がうまいのだ。他にも、カプチーノは言うに及ばず、クリーム系のトッピングメニューもたくさんある。ウィーンのカフェ気分を味わえる。ここは、又吉直樹さんが通った店。「火花」にも登場するということで、最近は若いひともいっぱい来るが、昔からの常連客も多い。本日もカウンターに座っていた方は「もう36年間、通い続けてるよ」と言っていた(のを小耳に挟んだ)。Since 1982年。
 
 80年代前半、南口の丸井の脇を通って井の頭公園に下っていく七井橋通りにあったカフェは、この武蔵野珈琲店と「くれーぷりー」。店名はたしかにそれだったと記憶しているが、この店でクレープを食べた記憶はない。井の頭公園の野良猫がいつも自在に店内に出入りしていた。その後、改修されてドナテロウズという店になり、今では建物自体が跡形もなく取り壊され「いせや」になっている。

 当時、頭の中で水腫のように膨張し続けていたさまざまな想念を、ああでもないこうでもないとノオトに書き綴っていたのは「くれーぷりー」だったり、この武蔵野珈琲店だったり、あるいは南口地下の「ストーン」だった。でも、そんな過去がほんとうにあったのかどうかなんて誰にもわからない。誰にも証明することは出来ない。すべては現在の記憶の中にあるだけのことに過ぎないのではないか。……ラッセルにかぶれて『哲学入門』や『心の分析』を一心不乱に読んでいたのも、ここ武蔵野珈琲店だったか「くれーぷりー」だったか。

turtle

Elmar 5cm f3.5 L + Nooky + GXR




 うどん好き、である。炭水化物全般が好きなのかもしれぬ。炭水化物の取り過ぎは健康に良くない。せめて分量は調節しよう。常々そう思っている。もうトシですから。

 田無市に住んでいる知人から、国分寺に居るなら「小平うどん」に行くべし、と薦められた。行ってみた。びっくりした。こ、これは。……この太さはなんだ? この色はなんだ?

小平うどん

 これは、むしろ「すいとん」に近いのではないか。水団。昭和30〜40年代に母親が何度か作ってくれたことがある。といっても、小麦粉こねてちぎって煮汁に入れるだけなんだけど。でも、歯ごたえがあって腹持ちがして、少年時代の好物だった。小平うどんはこれに近い食感だ。で、味がある。田舎蕎麦を食べたときのような滋味がある。これを肉汁に付けて食べるのがスタンダードなんだそうな。

 なんのスタンダード? と国分寺在住の人に尋ねると、武蔵野うどんのスタンダートとのこと。武蔵野うどんはコシの強い手打ちうどん。江戸時代までは農村の晴れの日の食事。肉汁で食べるようになったのは明治以降、とウィキペディアには書いてある。

 武蔵野うどんが好きなら、国分寺北口の「甚五郎」にも行くべし、といっしょに小平うどんを食べていたおふたりに囁かれた。

 純真なワタクシはさっそく行ってみた。こちらのお店のものは麺はもう少し細めで色もそんなに茶色っぽくない。ところが、田舎蕎麦との合盛もできますよ〜という店員さんの悪魔の囁き。素直に合盛を注文してみた。当然分量はハーフ&ハーフかと思いきや、なんとそれぞれ一人前ずつ。つまり二人前の大盛であった。こ、これは無理だ。胃拡張になる。でも、おいしいので残すのは忍びない。どうしよう。……純真なワタクシは、あああ、けっきょく全部食べてしまった。胃の中が炭水化物だらけ。意識が朦朧とし始めた。午後の授業に差し支えそうである。

 武蔵野うどん&蕎麦、恐るべし。

pan

Planar 80mm f2.8 of Rolleiflex 2.8F + TX400


 お鍋のインスタレーション。


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