トリプレットレンズが好きである。だって、ミリマリスムの極地だもの。レンズは貼り合わせなしのたったの三枚。ゆえにバルサム切れはないし、曇りにくい。三枚だけでもフォーカス部分はけっこうシャープで、背景には玉ボケが出る。そして、なによりも軽い。

 ライカのトリプレットエルマー90ミリ、ツァイスのトリオター85ミリを所有している。あるいは、ローライの C35とか。みんな暗いレンズである。当時の廉価版レンズ。でも、タマ数が少ないので現在では値段が高騰している。廉価版なのに市場価値が高い。あまのじゃくなアタクシは、こういうアンビバレント性に惹かれたりもする。

 あ、そう言えば。確かニコンにもトリプレットレンズがあったはず、と思い出していた矢先、程度の良さそうな Nikkor-T 104mm F4 のFマウントが信頼できるお店のネット上に掲載されていた。こういうのを邂逅と言う。あるいは単なる偶然と呼ぶ。割とリーズナブルである。といっても他のニコンの古いFマウントレンズに比べれば、このレンズだけは本数が少ないせいかけっこうお値段高め。でも、ライカレンズのような投機的な値付けは決してされない。

 1960年製のオールドレンズである。Sマウント用と Fマウント用がある。というか、Sマウント用に作られたものを Fマウントに転用したのだろう。1960年はかのニコン F が登場した翌年にあたる。だったら、Fマウントでも悪くないんじゃないか。最短距離もSマウントより短いし(寄れるし)。ということでポチってしまったのであるが、いざ届いたレンズを手に取って見るにつけ、さて、どのボディに合わせたらいいものかと途方に暮れてしまった。

 とにかく長〜い、のである。付属のフードを取り付けると無限遠の状態にしても長さが12センチ近くある。なのに細〜い、のである。フィルター径は34.5センチ(これがまた中途半端な寸法で、当時のフィルターはなかなか現存していない。最近ではサードパーティの会社から出ていると聞いたけど)。

 まずもって非Ai レンズなので、Ai 連動タイプのFM2とかには使えない。アナログなら元祖ニコンFとかニコマート。デジタルならアダプター経由でミラーレスの Zf に付けるのなら問題なかろうが、直接非Ai レンズの付くデジタル一眼のDf には、このレンズが初期の九枚絞りのロングリムのため適合しないというウワサもある。

 ま、されはさておき、Zf や Df に並べてみても、なんとも不格好。ボリュームのあるボディと細長〜いレンズがアンバランスなのだ。いろいろ試してみた結果、やはり元祖のニコンFがシルエット的には一番収まりがいいかも、とは思うが、それでも、ねえ。うーむ。

T105:4

 いずれにぜよ、このFは70年代以降のニューFなので、このレンズの年代に合わせるなら富士山マーク付きの初期もしくは前期のFを探さないといけない、などと、またよからぬ(瞑想、じゃない)迷走が始まってしまいそうな Nikkor-T 104mm F4 Fマウントなのである。