通っているテニスクラブでは、レッスンの前にみんなで準備体操をするのであるが、そのラストは各種ステップの確認で〆る。前後左右、そしてクロスステップ。で、その際、例によって天の邪鬼なワタクシは、心の中でいつも「マイムマイム」を唄っている。さすがにテニスクラブではみんなで「輪」にはならないが、いっしょにサイドステップとクロスステップを繰り返し、時折股上げするところなど、あのフォークダンス曲の定番「マイムマイム」にそっくりなのである。

 マイムマイム。小さい頃、あのメロディを聞いているとなんとも不思議な気持ちになったことを思い出す。自分たちのふだんの日常や風土とはまったく違う匂いを感じたのであろう。小学五年生の時だったか、気になって調べてみたところ、この曲はイスラエルの民謡で、歌詞は旧約聖書の一節からとったヘブライ語であると知って合点がいった。「マイム・ベッサンソン」(喜びを持って水をくむ)。いつもは大嫌いだった体育の時間が俄然面白くなった。

 さて、10月に入り、夏に逆戻りしたような強い日差しの日も時折あるが、空気は乾燥し確実に秋は深まってきている。緊急事態宣言が明けたこともあってか、近くの小学校の校庭で真っ白な体操服に赤い帽子を被った学童たちがノビノビと身体を動かしていた。「マイムマイム」を踊るのには最適な日、である。