クロード・ルルーシュ監督の「男と女 人生最良の日々」を見た。というか、見てしまった。80年代にも一度、20年後を設定した続編が作られたことがあって、こちらは見た後で後悔した。ましてや今回は53年後の設定。ジャン・ルイは89歳、アヌーク・エーメも87歳。これは、見ない方が賢明であろうとずっと思っていたのであるが、いやいや、今回のは絶対に見るべき! と友人に薦められ、恐る恐る映画館に足を運んだのであるが……。





 良かったのである。クロード・ルルーシュは今回は無理に新たなストーリーを作ろうとはせずに、53年後のふたりのダイヤローグをウイットとユーモアを効かせて撮影し、それを原作のセピアカラーの映像と再構成させつつ、なんとも人生の滋養に満ちた作品に仕上げている。

 1966年の原作「男と女」。20代の頃、この映画を何度見たことだろう。フランスかぶれになった原因のひとつは間違いなくこの映画にある。台詞はほとんど暗記している。ドーヴィルに行きたくてたまらなくなって、会社に入って最初のフランス出張の際、日曜日に空き時間が出来るやいなやSNCFでパリからドーヴィルに向かった。ワンレングスの女性に弱くなった(?)のもこの映画の中でのアヌーク・エーメのせいである。

 そして、今回の第三弾となる「男と女 人生最良の日々」。ラストが素晴らしかった。1976年に撮影された短編映画「 C'était un rendez-vous 」の映像がリミックスされているのだ。早朝のパリを疾走する車のワンテイク主観映像。モータースポーツをこよなく愛したクロード・ルルーシュ監督自身のアドレッサンス(adolescence)が切なくて愛しくて、ちょいと涙が出てしまった。彼も御年80歳を過ぎている。そして、パリは、やはり掛け値なく美しい街なのだ。