午後5時を過ぎたらあっという間に日没である。晩秋。すぐに闇夜がやってくる。篠突く雨が降っている。霧。街灯が滲んでいる。見下ろすように建っているマンションの部屋の明かりも幻想的だ。誰かが僕の跡を追いかけている。誰かに襲われる光景が既視感となる。あるいは僕ひとり、どこか異界に迷い込む。落ち葉を踏みしめると腐った臭いがする。紅葉。そう言えば響きはいいが、ようは朽ちた葉のことだ。昼間、街にはまだまだいい匂いが溢れていた。珈琲豆をローストする匂い。すれ違う女の子の綺麗な匂い。日向の匂い。それが、日が暮れると一変する。どこかから雑音の混じったラジオが聞こえてくる。ずいぶんと古い歌謡曲が流れている。ひとりじゃないって素敵なことね。

Summicron 50mm f2 R + fp
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