突然、いろんな人が語りかけてくる。ふいに、路地の奥から。あるいは木洩れ陽に乗じて。何も変わってはいない、と。ずいぶんと変わってしまった、と。
秋の陽射しはシルエットを長く伸ばす。でもそれは、この世界に実態なんてありはしないと嘲笑うような薄っぺらい影だ。これだから、秋は始末に負えない。
高い秋の空から逃れたくて、私は古い木製の階段を登り、屋根裏部屋に閉じこもる。分厚いカーテンを引いて、そこで、日が完全に暮れるのを待つ。
20時。もう大丈夫だろうと思ってカーテンを開けると、目の前に、まるでイタロ・カルヴィーノの小説に出てくるような、大きな、ぬめぬめとした月が黄金に輝いている。ほうら、思った通りだ。これが秋の本性なのだ。
再び分厚いカーテンを引いて、私はまた暗闇の中に閉じこもる。月が上空に消えてしまうまで、秋の空が清澄な星の光だけになるまで。
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