キャリアデザインは自分の専門ではないが、2016年に出たこの本は衝撃的だった。以来、何度も読み返している。

ライフシフト

 50歳の時、自分たちの世代ですらもう従来の3ステージ型の人生設計ではダメだと覚悟を決めた。ちょうど震災の年でもあった。その頃すでにこの本が上梓されていたら、自分が何を為すべきだったのかについてもっと明確に認識できていたのにと思う。

 45歳を過ぎた頃から、広告分野以外の人脈をつくろうと躍起になっていた自分を思い出す。今までに培ってきた専門性にこだわりつつも、それを他の分野に広げていくための糸口をずっと模索してきたように思う。そのために何が必要なのか。2016年になってこの本を読んで、そのあまりに明解なネーミングに膝を打ったものである。「変身資産」……なるほど、自分が当時、必死になって養おうとしていたのはこれだったのか、と。

 「ライフシフト 100年時代の人生戦略」。改めて読み返してみるとそこにはこんなふうに書いてある。

 行動の仕方やものの感じ方だけでなく、ものの知り方を変えるとき、そう、なにを知っているかだけでなく、どのように知っているかを変えるとき、変身は起きる。

 そのためには、

 多様性に富んだ人的ネットワークをもっていること、新しい経験に対して開かれた姿勢をもっていること。

 あるいは、こんなふうにも書いてある。

 あなたのことを最もよく知っている人は、あなたの変身を助けるのではなく、妨げる可能性が最も高い人物なのである。

 確かにそうなのである。当時、付き合いの長い友人たちはあまり相談に乗ってくれなかったように思う。的確なアドヴァイスをしてくれたのは知り合って間もない新しい知人ばかり。結果、疎遠になってしまった親友も何人かいる。そういうのはせつないことなのだけれど。とてもとてもせつないことなのだけれど。。