さあ、今日から春なのです。ダウンジャケットはクローゼットの奥にしまい込み、ベージュのトレンチコートに着替えましょう。そうして、蕾みが膨らんだ桜の木の下を通り、街外れの公園に向かって歩いていきましょう。

 太陽は輝き、夜は匂い立ち、そうして、時はよみがえる。

 でも、やっぱり。会えなくなってしまったひとに再び会える奇跡は起こらず、過去の悔恨は尽きることもない。けれど、だからといって自分の人生を卑下するなかれ。人生は最終的にはプラスマイナス・ゼロ。今までが良ければこれから下り坂、今まで悪かったひとはこれから上り坂。キミの人生はどうだ? うまくいったか、うまくいっているのか? うまくいってないと思っているあなた、ちゃんと努力すべき時に努力したのか? なんでもひとのせいにするなかれ。なんでも不運のせいにするなかれ。それにしても、いやですねえ。お互い年を取ると、みんななんだか、ひがみっぽくなってイヤですねえ。

 さあ、でも、今日から春なのです。もうすぐあなたも公園にたどり着くでしょう。そこは特別な公園なのです。中原中也がこんなふうに謳っていた、世にも不思議な公園なのです。

park

Illuminar 25mm f1.4 + E-PM1


 林の中には、世にも不思議な公園があつて、無気味な程にもにこやかな、女や子供、男達散歩してゐて、僕に分らぬ言語を話し、僕に分らぬ感情を、表情してゐた。
 
中原中也『いきてかへらぬ』