きれいな水色の海だ。きれいな水色の空だ。そして、その境をなす水平線は淡いピンク色に滲んでいる。空の所々に、真っ白な雲がメルヒェンみたいにぽっかりと浮かんでいる。
 
 そんな海と空と雲を眺めながら、僕はさきほどからうつらうつらしている。列車はコトンコトンと規則正しい振動を響かせている。僕の隣で、真っ白な麻のシャツを着た少女もうつらうつらしている。彼女がとてもきれいな横顔をしているのが僕にはわかる。鼻梁のラインがとても典雅なのが僕にはわかる。

 列車はホシユキという名前の駅を通り過ぎていった。星行と書くのか、あるいは星雪か。駅を過ぎてから、やがて、水色は少しずつ白っぽくなってきて、いつの間にか、まるで白昼夢みたいに見えてきて、その中に、なんとも風変わりな景色まで見えてきて、あるいはこれが蜃気楼というものなのかもしれぬ、そんなことを思いながら、僕と僕の隣に座っている少女はさきほどからずっとうつらうつらしている。

海と空