二年前、まだ五十半ばになる前に会社を辞めておいてよかった。最近、つくづくそう思う。とても良い会社だったのだ。でも、あのまま安穏とあの場所に居続けていたら、将来ロクなことにならなかったのではないか。会社では仕事にも恵まれた。部下にも恵まれた。おおよその指示を出せば優秀な若者たちがほぼ期待通りの動きをしてくれた。それをマネジメントと称するのなら私にもそうした能力が少しはあったのかもしれぬ。でも、直感的に思ったのだ。この先、もっと年を取ってからは会社で培った中途半端なマネジメント能力なんぞまったく役に立たなくなると。これからはもう一度「個」の力こそがすべてだと。如何に自分のプロフェッショナリズムを維持し成長させていけるのか。それをメディア化できるのか。ジェネラルな能力だけではこの先70歳まで食ってはいけぬ。そう思ったのだ、直感的に。

 でもまあ、今でも時折昔のクセで、書類のコピーぐらい誰かやってくれないものかと思ったりするのだが、大学ではそんな甘えは通用しない。コピーは全部自分で取るのである。普通のコピーはコストが嵩むからリソグラフを使ってまずは製版するのである。授業開始前のスクリーンや音響のセッテイングも自分でするのである。(と言いつつ、ああ、またMacbookのミラーリングの調子が悪いみたいです、助けてくださいーとAVルームに電話しているワタクシ。)研究費の精算も自分自身でこまめにエクセル表に記入するのである。(ま、これは当たり前かw)

 年を重ねれば重ねるほど、全部自分でやるのである。それが正しい年の取り方なのである。