ほんとうに良い小説というのは、ごくごく限られている。そう思う。魅惑的なストーリーテリング、そして匂い立つような文体。それらを兼ね備えている小説はこの世の中にさほど多くは存在しない。
最近、職業が変わって(というか増幅・増量して)、読むべき書籍や目を通すべき文献の類いがあまりに多義にわたってきたせいもあるが、ふと空いた時間に、無性に良い小説が読みたくなる。時間が限られているので新しいものにチャレンジする余裕はない。その結果、ゼッタイに間違いのないものを再読することとなる。
カポーティの小説は間違いなくそれに値する。「遠い声 遠い部屋」「夜の樹」もいいが、やはりここは基本中の基本である「Breakfast at Tiffany’s」だろう。かの映画以上に原作は素晴らしい。カポーティ34歳の時の作品である。そして今では、瀧口直太郎氏と村上春樹氏のふたつの翻訳が楽しめる。
Never love a wild thing. That was Doc’s mistake. He was always lugging home wild things. A hawk with a hurt wing. One time it was a full-grown bobcat with a broken leg. But you can’t give your heart to a wild thing. The more you do, the stronger they get. Until they’re strong enough to run into the woods. Or fly into a tree. Then a taller tree. Then the sky. That’s how you’ll end up. If you let yourself love a wild thing. You’ll end up looking at the sky.
でも、(中略)
It’s better to look at the sky than live there. Such an empty place, so vague. Just a country where the thunder goes and things disappear.
彼女が時々襲われる、ブルーな気分ならぬアカな気分(mean red)のことを説明している場面だ。それでも、ゴライトリーは旅を続ける。雷鳴がとどろき、ものごとが消え失せてしまう空虚な空の果てを。
Miss Holiday Golightly, Traveling.
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