すみだ北斎美術館へ行ってきた。今年に入って二度目。二十年来の大切な友人がこの美術館の開設の段階からずっと運営に携わっている。
今回はピーター・モースコレクション。どれも素晴らしかったが、中でもこの作品が群を抜いていた。富嶽三十六景の武州玉川。大判の錦絵である。なんというモダンな構図であろう。乳白色の「すやり霞」が空間と時間を構成主義的に転換している。そして、空摺(からずり)。川面の波模様の一部に敢えてインクを乗せずにエンボス加工のみしてあるのだ。現物を間近で眺めて思わずため息。画狂人北斎がいかにモダンアーティストであったかはこの作品を見ればわかる。
友人が、もうひとつ、空摺を使った作品を教えてくれた。こちらは土佐日記を題材にした小品で、舟の舳先に佇む女性の手からこぼれた懐紙が風に舞っているさまが空摺で表現してある。なんとメタフィジカルな詩情に溢れた作品であろう。
大満足のすみだ北斎美術館。ピーター・モースと楢崎宗重二大コレクション展は4月2日まで。
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