マンションに住むとしたら何階がいい?

 最上階、と答える人は多いだろう。人間は眺めのいい部屋に憧れる。あるいは、敢えて一階と答える人も多いかもしれない。エレベーターに乗らなくてもいいし、通りに面している方が街の活気がダイレクトに伝わってくるし。

 で、私はと言えば、半地下と答える。相変わらずのあまのじゃくでスミマセン。でも、かなりの昔から(たぶん小学生ぐらいの頃から)将来自分がマンションやビルに住むとしたらゼッタイに半地下がいいと思い込んでいたフシがある。地下ではない。半地下である。まったくの地階は陽が当たらず陰気だが、半地下は決してそうではない。

 私がずっと思い描いていた半地下の部屋というのは、以下のような部屋である。かなり具体的なイメージがあるのだ。

 そのマンションは低層の三階建てで、とあるミナト町の坂道沿いに建っている。坂の傾斜は緩やかで、人々はゆっくりとその道を登り、ゆっくりと下っていく。マンションはそこから3メートルほどセットバックしたところに建っていて、しかも一階部分が道路から1メートルほど下がっている。つまり、入口となる一階部分が半地下に位置しているのだ。で、そこからはいつも窓越しに、坂道を登り、あるいは下っていく人々の姿を仰角30度ぐらいで眺めやることができる。彼ら彼女らの顔はよくは見えない。でも彼ら彼女らの伸びやかな肢体を、少し距離を置きながら憧れを持って仰ぎ見ることができる。そして陽の光は、夏は1/4ぐらいまで、冬には部屋の半分ぐらいのところまで差し込んできてくれるだろう。…そのくらいがいいのだ。そのくらいがちょうどいい。内側から外の世界を眺めやる感じも、陽の差し込む感じも。