どんなことでも、上達するというのはやはり嬉しいものである。特に年を取ってから身体的な技能があがったと言われると(それが単なるお世辞だとわかっていても)ことのほか嬉しいものである。
 10年来通っているテニススクール、うふふ、上級クラスなのである。10年間よくぞ月謝を支払い続けてくれましたね、日頃のご愛顧に感謝を込めて、ということなのかもしれないし、まあ、このオッサンがこれ以上伸びることはないけれど、このあたりで打ち止め昇格ということにしておきますかっ、というコーチの親心かもしれない。

tennis

 でも、理由はなんであれ、その結果、50を過ぎてから、高速サーブをバンバン打ち込んでくるチリッチ君みたいな上級の若者たちに混じってコートを駆け回れるというのは有り難いことなのである。たまには彼らに負けないくらいの(オールドスタイルだけれど)サーブ&ボレーだって決まる。テニスを始めた若い頃に比べても、たぶん今の方が球速も上がっていると思う。
 スタイルもよくなった、かもしれない。自分で言うのもなんだけれど、ヒップラインもキュッとカッコ良くあがったような。肘は左右ともにエルボーバンドのお世話になっているけど。

 40代の頃から、意図的に「らしくないこと」をするようになった。いかにも自分っぽい自分がつまらなく思えてきた。どう見たって根っからのスポーツマンではない。でも、だからこそテニスもハードにやるし、スキーも果敢にダウンヒルに挑戦する。なにごとも意外性が大切。自分自身の文脈だって同じことなのではないだろうか。たぶんアイツならこのシチュエーションでこうするだろう、と自分を知っている人たちが予測するウラをかく。ひねりすぎて失敗することもあるのだけれど。