小川糸さんの「ツバキ文具店」を読んだ。

ツバキ文具店

 これはもう、鎌倉好きにはタマラナイ小説である。巻頭に鎌倉の地図のイラストが付いている。そこに載っているいくつかの店は(ツバキ文具店を除いて)すべて実在。和田塚の鰻屋「つるや」、小町通りのカレー屋「キャラウェイ」、栗大福の「長嶋屋」などなど、鎌倉在住なら必ず一度は行くべき店々のオンパレード。

 農協連(レンバイ)の中にあるパン屋「パラダイスアレー」も出てくる。ここの餡パン大好き。

餡パン

 北鎌倉駅前の稲荷寿司「光泉」や「あがり羊羹の松花堂」も。そのすぐ近くには「大陸」という庶民の味方のおいしい中華料理屋さんもあったりするのだが。(残念ながら「大陸」は小説には出てこない)

あがり羊羹

大陸


 夏から始まり、春で終わるこの小説。全編から鎌倉の四季の匂いが生き生きと伝わってくる。

 さて、暦も六月に変わった。これから鎌倉は雨の季節。明月院や成就院の紫陽花は今が見頃だろう。

紫陽花

Pentax 8.5mm f1.9 + Q-S1


 夏場の鎌倉の湿気は尋常ではない。これは住んだことのある人間じゃないと実感できない。車で朝比奈を超えた瞬間、空気がガラリと変わるのだ。(これ、大げさでもなんでもなく)でも、だからこそ緑も花々も美しい鎌倉。やはりここは自分にとってかけがえのない場所。過去はもちろん、未来の物語もまだまだいっぱい詰まっていそうな街である。