三の鳥居から横小路 北条の屋敷跡抜け 山の中へと忍び込む なめり川 細い流れに沿いながら 北へ歩く まだまだ歩く 女の家は なめり川 川に面してひっそりと ぽつりと一軒建っていて 屋根も壁も墨一色 荒れ放題の裏庭に 白い野草が群れている 遠目には白く優美に見えるその花も よくよく見れば 花弁がえぐれたように開いている 青紫と黄色の文様が なんとも卑猥でグロテスク しゃがの花 女は花の名前を教えてくれる けれども女は自分の名前を教えない 家には表札一枚出ていない

射干の花

FD Macro 50mm f3.5 + α7s