開業届を出すにあたって屋号を付けるかどうかずっと悩んでいだ。今後たったひとりで生業を立てていく決心をしたのだから、その看板は自分の名前以外他に何がある?そう思ってはいたのだけれど、現実問題、屋号がないとなかなかうまく立ちゆかないことも多いらしい。開業の申請等は屋号がなくても全然構わないのだけれど、銀行さんに「やっぱりちょっとカンベンしていただけませんか」と言われ。…ようは事業用個人と単なる個人の見分けが付かなくて困ってしまうのだそうである。なにが困るのかよくわからないのだけれど、担当してくれた窓口の女性をこれ以上困らせるのも忍びないので、この度、けっきょく屋号を付けることにした。
 広告に限定されたクリエイティブディレクターで生涯を終わりたくなくて、いろんなことに首をつっ込んでみた。そして今感じていることは、改めて「モノ」にこだわることこそが面白いのでは、ということだった。モノといってもいろいろある。フィジカルなモノ、ヴァーチャルなモノ。確固たる形をしたモノからニュアンスを伝えるだけの曖昧なモノまで。そして今ではテクノロジーの進化によってその境界線がとても unframed(枠なし)になってきている。そうしたモノにまつわるストーリーテリングを新しいメディアとともに開発していくことこそが自分のライフワークなのではないか、そう思ったのである。モノにこだわり続けると言う意味では、広告というのはその原点だし、だとすればもう一度広告のことも新鮮に捉え直すこともできそうだ。

 で、付けた屋号が「モノ・カタリ。」なんだか陰陽師みたいでちと怖い、という同業者もいる。腸カタルでも起こしそうだ、という口の悪い友人もいる。昔、カタリカタリという唄があったねえ、という親族もいる。今流行のカタリスト?というアーリーアダプターもいる。ま、なにはともあれ、付けてしまった屋号。「モノ・カタリ。」をどうぞご贔屓に。

monokatary

FE Sonnar 55mm f1.8 + α7s