久しぶりに淡路町の神田藪蕎麦に行った。3年ぶりぐらい。火災後は初めて。新築された店内はずいぶんと広くなったが、平日の午後三時でもほぼ満席だ。メニューも変わってない。今の時期ならもちろん名物「かきそば」だろう。雰囲気も変わっていない。「ありがとうございます」ではなく「ありがとう存じます」「せいろそば」ではなく「せいろうそば」(蒸籠、だからたしかに正式な呼び方はせいろうなのである)
 例の大相撲の呼び出し風の注文確認の声も健在だ。ここは江戸の蕎麦とは何たるかを検証するには最適の店である。営業時間は昼時から夜までエンドレス。元来蕎麦とは決まった食事時に食べるものではない。いつ食べてもいいのだ。(だから平日の午後3時に満席というのは江戸の蕎麦屋らしき光景なのである)小腹が空いた時に少量食べる。(だからここのせいろうそばは量が少ない。大盛り不可。で、けっきょく2枚食べて1300円を超えてしまうのはいかがなものかとは思うが)蕎麦なんぞは日本酒のおつまみに過ぎぬ。天麩羅蕎麦が腹にもたれるのならいっそのこと蕎麦すら要らぬ。天麩羅だけでいい、ということで神田藪蕎麦にも「天抜き」がある。(それを言うなら「蕎麦抜き」なのではないかと常々思っているが)

やぶ


 ということで、本日はふたりで穴子の白焼きとせいろう2枚とかきそばを食べて5000円也。やっぱり高いな。高すぎる。確かに江戸文化の片鱗は堪能できるが、決して香り高い蕎麦というわけでもないし、それにやっぱり、あの風情ある建物を消失してしまった神田藪蕎麦というのはどうも。なんだか欲求不満が残ってしまい、そのまま「竹むら」に駆け込んだ。

 こちらは昭和5年築(亡母が生まれた年だ)木造三階建の美しい建築が現存する。ただ古いだけではない。とても手入れが行き届いている。九十度に折れ曲がった階段がイカしている。ここで食べる揚げたての揚げ饅頭と大人の味の粟ぜんざいは絶品だ。次回は最初からここに来て、雑煮+揚げ饅頭+あんみつコースにしようっと。