ライカのA型やⅠf、あるいはローライ35など、距離計の付いてないカメラはおおらかな気分で目測スナップするのが王道。でも、どうしても正確に距離を合わせたくなったら単体の距離計が必要になる。この煙突みたいな長い距離計を付けると、なんとも大仰な姿になってせっかくのサイズ感が台無しになってしまうのだが、測距の精度は長い分だけ距離計内蔵カメラよりもはるかに高い。
使い方は、1)距離計の測距窓から対象物を見てダイヤルを回しながら二重像をあわせる。2)合掌したところの数字をダイヤルから読み取る。3)その数字と同じになるようにレンズのヘリコイドを回す。という手順になるが、ここでいささか問題が生じる。距離計のダイヤルもレンズの方も、目盛りがそれほど細かく刻まれているわけでもないし、双方が一致していない場合もある。おまけに、メーター表示ではなくフィート表示だったりすると、測距結果が2.5フィートと3フィートの中間ぐらい、とか、80フィートと無限大の中間ぐらい、なんて出ると一瞬頭の中が白くなる(フィートなんて30倍しておけばそれでだいたい合っているんだけどね。3フィートは約90センチ、80フィートは約24メートル)。せっかく単体距離計付けているのにまたまたアバウト。ううむ、どうにもすっきりしない。
で、考えた。というか、順番を変えてみた。じゃあ、自分の足で合わせればいいのではないかと。つまりはこういうことである。1)まずは対象物までの距離を距離計でざっくり測ってみる。結果、10フィートと13フィートの中間ぐらい、と出たとすれば、2)レンズのヘリコイドには13フィートの表示がないので距離計もヘリコイドもどちらも10フィートに正確に合わせる。3)そのまま自分が動いて今一度二重像が正確に合致したところでシャッターレリーズを押す、という案配である。
これでようやく気分はスッキリしたののであるが、ふと冷静になってみると、2023年の現代になって、いったい何をやってるんだろうと自分自身に呆れることになる。今や iPhone に付帯したカメラを起動させれば超広角から望遠まで瞬時にピントを合わせることができるし、ポートレートモードなら前後のボケも(擬似的ではあろうが)自由自在だ。そんな時代に今更、なにもこんなしち面倒くさいことをして写真を撮らなくても、と。
でも、ライカAの初期型に至ってはおよそ100年前のカメラなのである。それが現代でも使えることのかけがえのなさを徹底的にスローライフに味わうというのも、これまた実にオツなことではないだろうか。

Elmar 5cm f3.5 (close focus, Görz) of Leica A early + FOFER + Fuji Superia 400