かれこれオールドレンズ&カメラ歴もずいぶんと長いので、ほとんどのレンズに関してはその種類や特性についてそこそこ詳しいと思っていたが、先日、久しぶりに中判のローライフレックスに120フィルムを入れて撮影した後、書籍等でレンズ構成を改めて確認していて思いがけない発見をした。
十数年前、ご多分に漏れず私もローライのレンズはプラナーかあるいはクセノタールかでさんざん迷い、けっきょく両方買ったクチであるが、その違いはハッキリ言って未だよく分からない。プラナーの方がやや全体的に柔らかいかな? クセノタールの方がやや線が細くて精緻な感じかな? ぐらいのものである。
それよりも同じ中判用プラナー80mmF2.8なのに、ハッセル用のプラナーとローライのプラナーの違いの方が顕著に感じられる。ハッセル用のプラナーは後ボケも綺麗で柔らかくまさにポートレート向きであるが、ローライの方は中央の解像度は高いが周辺の収差が割と大きくてその分絵画的で面白い。いずれにしてもこの両者、同じ名前で同じ焦点距離同じ最小絞りのレンズには感じられないのである。
で、よくよくレンズ構成を調べてみたら、ローライのプラナーは定番のダブルガウス型とは言い難い。後群がトボゴン型なのである。(*ちなみにこれは80ミリに限ってのことで75ミリの方は通常のダブルガウス型)前群がダブルガウス型で後群がトボゴン型、つまりはこれ、クセノタール型なのである。要するにローライ用80 ミリのプラナーとクセノタールは、ほぼ同じレンズ構成だったのである。これではプラナーとクセノタールで写りにあまり違いが感じられなくて当然であろう。
さて。半分がトボゴン型と知って腑に落ちた。ローライの80ミリの写りが好きな理由。どこかちょっと危ういのだ。破綻する予感が片隅に漂っている。そんな全体の雰囲気の中で、フォーカスしたい対象物だけが浮きあがるように写る。
Planar 80mm f2.8 of Rolleiflex 2.8E2 + Delta400
教訓。いずれにしてもレンズ名はあまり鵜呑みにするべきではないということだろう。名前はプラナーでもその実はクセノタール型だったということだ。戦前のビオゴン35ミリも名前はビオゴンだがその実はゾナー型である。オールドレンズはまだまだ奥が深い。