箱根方面での仕事の帰り、熱海に寄り道した。久々に老舗の洋食屋さんに行ってみる。この店に、先日亡くなった義父を何度かお連れしたことがある。
12時きっかりに入店してランチを注文する。オードブルと熱々のスープ、フレンチドレッシングで和えたサラダを食べた後、メインディシュを選ぶ。
義父は食にはあまり関心がなかったようで、自分からあのレストランに行きたい、ここの料理が食べたいと言うことはめったになかったが、この店だけは特別。ちょっとお洒落して(ネクタイをきちんと締めて帽子を被って)、ナイフとフォークを使ってカツレツやメンチカツ(いつも揚げ物ばかり。ここ、ビーフシチューも絶品なのに)を注文し、どこか懐かしげな表情を浮かべてはビールを一本。小さい頃にご尊父やご母堂に連れられて通った近所の洋食屋のことでも想い出していたのだろうか。
義父のことを偲びながら、今日は私もメインディシュに豚ロースのカツレツを注文することにした。デミグラスソースをたっぷりとかけ、辛子を少しだけ付けて。旨い洋食屋さんのカツレツはどうしてこんなにもパン粉の焦げ具合が香ばしいんだろう。そして、ライスではなくロールパン。旨い洋食屋さんのロールパンはどうしてこんなにも美味しいのだろう。ホテル仕様のバターが添えてあるからかもしれない。
XF 35mm f1.4 R + X-T30II
食後、店を出てから自慢のパイプで「桃山」を一服。その時の義父の横顔はとても柔らかで、自らの人生を十分楽しんでいるように見えたのだけれど。改めて合掌。