2021年11月
白狐
秋の色相
フレア
本日のタイトルは、フレア、である。といっても、またオールドレンズを買ったわけではない。ここのところずっと愛用している眼鏡(跳ね上げ式になっていて、手動で遠近両用に変えられて便利なのだ)をいつも肌身離さず、お風呂の湯船の中にまで持ち込んでいたために、所々コーティングが剥離してしまい、こうして西日の強い秋の午後に外を歩いていると、強烈に眩しいし、世界が白濁してししまうのだ。さすがにこれでは目にも悪そうなので近々眼鏡店に行ってレンズだけ入れ替えてこようと思っている。若い頃はいろんなデザインの眼鏡フレームを衝動買いしてばかりいた自分が、レンズのコーティングが剥げるまで同じフレームを何年も使い続けるようになるとは、物持ちがよくなったというか、年を取ったというか、はてさて。
ところで、こうして西日に向かって目を細めて歩いていて、ああ、オールドレンズのフレアってのも、ようするにこういうことなのね、ただコーティングされてないために(あるいは単コーティングのために)直射する光を防御しきれず光が乱反射したり、あるいは世界が霧がかかったように白濁する、ただそれだけのこと。それを絵画的だとか幻想的だと言ってありがたがっているだけのことなのね、と身を持ってわかって、可笑しくなった。
これは実際問題、目によくないね。眼鏡のレンズもカメラのレンズもやはりマルチコーティングがよろしいようで。
ステキなネーミング
コロナ禍に加え、ここ数ヶ月公私共々いろいろあってなかなか時間がつくれず、かといって次の論文の準備もしなくちゃならない。だとしたらこのタイミングしかないと久しぶりに超特急で研究出張に出掛けた。場所は山口。山口情報芸術センターの企画展示で見ておかなくてはならないものがたくさんあるし、山口と言えば中原中也の古里。記念館の過去のアーカイブから入手したい資料もたくさんある。ということで慌ただしく二日間が過ぎていくのであるが、瞬間空いた時間帯に昼食も兼ねて山口駅前の通りを歩いてみた。旅をしていての楽しみのひとつに何の予備知識もなく(ネット時代、この何の予備知識もなくというのが極めて困難なことではあるのだけれど)、自分の直感だけを信じてふらりと一期一会にいろんな店に入ってみることであるが、今回は、ネーミングに惹かれて二店ほど。
ひとつは「月光カメラ」という名のフィルムカメラ店。古いローライフレックスが通りに面したショーケースに置かれている。はてさて名前の由来は月光菩薩か月光仮面か、ベートーベンかドビュッシーか(ちなみに今夜は部分月食が見れるかもしれない)、あるいはやはり印画紙の「月光」か。もうひとつは「もなの珈琲」。なんだろう、「もなの」って。けっきょくこの店でサラダ付きのクロックムッシュと珈琲のセットを頼んでしばし休憩することにしたのであるが、珈琲もパンも美味しく店の雰囲気も落ち着いていて直感は当たった。ただし、店名の「もなの」のヒントはどこにもなく(HP等を見れば出ているのかもしれないが)、名前の由来の謎はそのままに、店内に置かれている書籍やマンガ、雑誌の類いに目を通すとこれまたステキなネーミングのものばかり。「世界で一番美しい犬の図鑑」、そしてマンガの「スズキさんはただ静かに暮らしたい」が数巻置かれている。
なんだか嬉しくなってしまった。時に世界は(あるいは神様は)偶然を装って、現在の自分の心境を的確に提示してくれるのだ。でも、「もなの」っていったいどういう意味なんでしょう?