naotoiwa's essays and photos

2021年03月

sakura

Biogon 21mm f4.5 (contax C mount)+ Contax Ⅱa + Lomo100 + Color Efex Pro


 sakura in the middle of the night.





山桜

Planar 35mm f3.5 (contax C mount) + Contax Ⅱa + Lomo100


 市中の山桜。




 先日、仕事で横浜方面に用事があったので、帰りに久しぶりに定番のコースを散歩してみた。桜木町駅からウォーターフロントへ出て、日本丸メモリアルパーク、みなとみらいの風景を眺めながら運河パークを渡って赤レンガ倉庫へ。そのまま山下公園に行って氷川丸を眺め、ホテルニューグランドから海を離れ中華街を経由して石川町駅へ。暖かくて桜も咲き始めていたし、潮風を感じながらの横浜は心地よい。

cherry

 この街にじっくりと腰を据えて住んだのは一年足らずだけど(山手のイタリア山公園の近くに住んでいた)、若い頃からずっと憧れの街だった。大学生になりたての頃、「プロハンター」という横浜の街を舞台にしたテレビドラマがあって(藤竜也さん、草刈正雄さん、柴田恭兵さん)、クリエイションのアイ高野さんが唄っていた主題歌の「ロンリー・ハート」を毎週聞いていた。今でもよく歌詞を覚えているが、恥ずかしながら最近になって自分が大きな勘違いをしていたことに気がついた。向田邦子さんの「眠る杯」(「巡る杯」の聞き間違い)「夜中の薔薇」(「野中の薔薇」の聞き間違い)の類いである。問題の箇所は「天使の空、星が泳ぎ、俺たち汚す悲しみも」のところである。このドラマ、横浜エリアが舞台だったので、この後半部分をずっと「俺たち横須賀馴染みも」だとばかり思っていたというお話。(ま、一度改めてみなさんも聞いてみて下さい)

 まあ、その勘違いはともかく。自分の中では横浜は常に異国情緒たっぷりのカッコいい街であり続けた(まさに「薄荷たばこふかしてBLUESY」)。あれから約40年、その間にこのウォーターフロントエリアもずいぶんと新しく整備されていったが、山下公園の氷川丸と「赤い靴はいてた女の子像」、そしてニューグランドの旧館は変わっていない。

赤い靴

all photos taken by Jupiter-12 35mmf2.8 + KIEV ⅣaM + Lomo100



 本日誕生日を迎えました。くぅー、還暦だそうです。60歳だそうです。目眩がします。クラクラ。

 けっこう長い時間を生きてきましたのでね、このくらいのトシになると、正直言って「昔恋しい」ときも多いです。でもこの一年、おかげさまで、今までにない自分を規定してくれる新しい「他者」、新しい「物語」にたくさん巡り会うこともできました。「我ン張」らなくてはと思っておりマス。はい、中原中也の「頑是ない歌」のごとくです。

 思えば遠く来たもんだ 此の先まだまだ何時までか 生きてゆくのであろうけど 
 生きてゆくのであろうけど 遠く経て来た日や夜の あんまりこんなにこいしゅては 
 なんだか自信が持てないよ さりとて生きてゆく限り 結局我ン張る僕の性質(さが)


 「頑是ない歌」、大好きな作品のひとつですが、こうして読み返してみると、今の自分の半分以下の年齢で、既にこれほどのノスタルジーと達観を決め込める中原中也はやっぱり天才だわいと、改めて恐れ入ってしまう訳です。

 長く生きていると、どうしてもその分、自分のアイデンティティなるものを勝手に作り上げてしまいがちです。還暦を迎え、これからはそういうものをどんどんユルくしていけたらなあと思います。あるいは、九鬼周造言うところの「そこではまだ可能が可能のままであったところ」に遡っていけたらなあと思っています。

 それにしても。神社に行って厄年年齢表なんぞを見たりすると、なんと60歳は男も女も厄年なわけでして、還暦になった人がみんな厄年というのもなんだかなあと思ってしまう今日この頃です。「思えば遠く来たもんだ」

 *本日は、本務校の卒業式。近くの野川の桜はほぼ満開でした。 

野川

Elmarit 28mm f2.8 2nd + fp







 

pray

Oplar 50mm f2.8 + FOCA PF3 + Fuji100

 pray.




 なんだか最近、お洒落なフルーツサンドの店がブームですね。フルーツ大福の店なんかもある。恵比寿にあるこの店も連日長蛇の列である。平日の開店直後、まだそんなに並んでいない時間帯を見計らって試しに買ってみることにした。ミニマルで洒落た店の内装に色とりどりのフルーツの色が映える。
 まずは入口で、感染予防対策もあってか「当店は完全キャッシュレスです(現金は使えません!)」と告げられる。その後、店員の方がお客さんひとりひとりに商品の説明をしてくれる。「今日はパイナップルがお薦めですよ!」とか「イチゴは各種あって、あまおうは、云々、とちおとめは、云々、エトセトラエトセトラ」とまるでコンシェルジュみたいに。各々の値段は商品近くには表示されておらず、全部選んで会計時でないと正確な金額はわからない。今回はあまおうとみかんとお薦めのパイナップルにしてみたが、どれもたっぷりのフルーツと上品な甘さの生クリームの組み合わせが絶品で、なるほど、これは少々値段が高くても人気が出るかもね、と思った。

フルーツサンド


 まあ、自分のような世代の人間は、生フルーツサンドといえば、伊豆は河津湯ヶ野にある「塩田屋本家」のもので十分おいしく懐かしいのだけれど。(すぐ近くには「伊豆の踊子」の舞台で有名なあの福田屋がある)

 さて、お恥ずかしながら若い頃(二十代の半ばごろ)に妙な潔癖主義から、一時、ベジタリアンならぬフルータリアンに憧れたことがある。で、何週間か実践して見事に挫折した経験がある。そんなことを思い出させる近頃のフルーツサンドブームである。



 今まではあまり気に留めたことがなかったのだけど、最近、フランスのライカ風レンジファインダーカメラの FOCA が気になってしかたがない。初期のものはスクリューマウントで(ライカのスクリューとは径が違う)レンズ交換が可能だが、50ミリの標準レンズしか距離計が連動しない。シャッターダイヤル兼用の巻き上げノブは一回転半ぐらいグリグリと回さなければならず、おまけにノブの表面形状がソリッド過ぎて指先が痛くて皮が剥ける。使いにくいことこの上なし。けれど、カメラ全体のデザインがバツグンに垢抜けているのだ。フランス1960年代のモダンデザイン。

FOCA


 そしてなにより、標準で付いている50ミリのOplar 50mm f2.8、計ったら100グラムにも満たないこの軽量アルミのレンズの写りがなんとも味わい深い。彩度低めのクールトーン、色相も光線の加減によって青みがかったり黄色がかったりで、久々にフィルムで撮っていて楽しくなるレンズである。

仁王

Oplar 50mm f2.8 + FOCA PF3 + Fuji100


 デジタルでも是非使ってみたいのだが、あいにくFOCAのマウントアダプターはメジャーなメーカーからは市販されていない。

 FOCA。ライカに較べれば工作的な精度はずいぶんと落ちるのだろうけれど、カジュアルにユルく使いこなしたい洒落たフレンチカメラである。残念ながら日本にはあまり個体が入ってきていないようで、状態のいいものに巡り会えるチャンスが少ないのだけれど。

mask

Septon 50mm f2 + α7s


 mask.


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