2020年09月
おはぎ
the memory police
時折、無性に小川洋子さんの初期の小説を読み返したくなることがある。『完璧な病室』とか『薬指の標本』、あるいは先日ブッカー国際賞の最終候補にも選出された『密やかな結晶』などなど。たぶん、あのロマネスクな抽象性や、あのカフカ的な不条理性が無性に恋しくなるからだと思う。
いま、英文のペーパーバックで『密やかな結晶』(英文タイトルは『the memory police』)を再読しているのだけれど、改めて、彼女の小説はどれも日常的な湿気た風土から完全に解放されていると感じる。だから「物語」がピュアなのだ。
『the memory police』。記憶狩り。中世的な話である。近未来的な監視社会の話でもある。あっという間に季節が巡りすぎてしまった後の、晩秋の乾いた絶望を感じさせる話である。
庚申講
smelling
rainy night
ベス単
été
今度は、超大型の台風である。
2020年の夏はなんともひどい夏であった。コロナ禍はもとより、執拗な長雨が続いて8月にならないと梅雨が明けなかったり、かと思うと、その後は一転猛暑、40度超えのところまで出てきたり、で、9月になったらなったで、すぐにこの台風である。
かつての夏は、もっと心地よい季節だった。真夏でも厭な汗をかくことはなく、ドライ効果をうたう化繊など着なくとも、潮風をなびかせた綿100%のTシャツだけで快適だった。海が好きな女の子たちはきれいに日焼けして、踝のところまでロールアップしたジーンズで夏を謳歌していたし、その背景にはいつもボサノヴァの名曲が流れていた。
地球は、この世界は、元に戻るのだろうか?
*沖縄、九州エリア等に甚大な台風被害が出ないことを切に祈っています。