吉祥寺に行くたび、必ず立ち寄る場所がある。井の頭自然文化園。ゾウの花子がいたことで有名な動物園である。その花子も4年前に亡くなった。でも、それからもずっと、昔も今もここに通い続けているのは、動物園に隣接するエリアに点在する北村西望の彫刻が目当てである。何度見ても飽きない。
ここは、長崎の平和祈念像で有名な北村西望が、東京都から土地を借りてアトリエとして使っていた場所である。そのアトリエが現在でも他の二棟の建物(彫刻館AとB)とともに動物園の奥に建っている。で、数多くの西望の彫刻群の中で、とりわけ好きな作品がこのアトリエ館の壁に掛かっている。それが「寄木装飾」である。これ、他の彫刻を制作した際の余った木片を閂で繋いだだけのもので、西望の他のマッチョな塑像群に較べるとなんとも簡素で小ぶりな印象を受けるが、見れば見るほど味わい深い。西望自身も、これらの寄木装飾を「まるで天国にいるようだ」とことのほか慈しんでいたようである。
北村西望。1884年、長崎県生まれ。1987年、東京都武蔵野市で死去。