まだ五月だというのに、今週末、気温は30度を超え35度になるところもあるとのこと。あっという間に夏到来である。というわけで、髪の毛を切ることにした。さっぱりと。
「サイドは耳にかからないように。で、前髪も揃えちゃおうかと」と言うと、いつも担当してくれている美容院のお姉さんは、「じゃ、マッシュくんにしちゃいましょうか?」と乗り気である。マッシュルームカット?「攻めましょう。おわんみたいにしちゃいましょうよ。ウフフ」……
「あ、いや、サイドはボリューム付けたくないんで、マッシュルームカットはご勘弁」「でも、前髪は揃えるんですね?」「はい、眉の上で」「パッツン、でいいんですね」「はい、パッツンでお願いします」
ええっと、心の中で想定しているのは藤田嗣治のおかっぱカットなのである。最近では仏文学者で小説家の小野正嗣さんがそれっぽい髪型をしている。それらを意識してのオーダーなのである。
ザクザクザク。ジョキジョキジョキ。……髪の毛のボリュームが半分ぐらいになった。で、最後に前髪をチョキチョキチョキ。彼女はとても手際がいい。感覚派で天才肌である。ものの10分で仕上がった。「はい、できました!」……鏡を見る。眼鏡をかける。土台が違うのはいたしかたないけれど、髪型だけはレオナール・フジタと相成った。
「お似合いですよ」(お世辞でも嬉しい。ありがとう)彼女が鏡の中を見つめながら教えてくれる。「最近の若者はこれをオン眉と言います」「おんまゆ?」「眉の上のところで切りそろえるからオン眉」
ひとつ知識が増えました。パッツン、オン眉。