2018年04月
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過去の自分をほめてやろう
時折柄にもなく、「今までの自分の人生、ほんとうにこれでよかったのだろうか」なんて思い巡らし夜も眠れなくなることがあるけれど、そんな時は、この文章を読み返すことにしている。
ドラマ「最後から二番目の恋」(の続編の方)の最終回、ラスト近くのモノローグの台詞。脚本は岡田恵和さん。
人が大人になるということは、それだけ多くの選択をしてきたということだ。なにかを選ぶということは、その分、違うなにかを失うことで、大人になってなにかをつかんだ喜びは、ここまでやったという思いと、ここまでしかやれなかったという思いを、同時に思い知ることでもある。でも、そのつかんだなにかが、たとえ小さくとも、確実にここにあるのだとしたら、つかんだ自分に誇りを持とう。勇気を出してなにかを選んだ過去の自分をほめてやろう。よく頑張って生きてきた、そう言ってやろう。そして、これからを夢見よう。
勇気を出してなにかを選んだ過去の自分をほめてやろう。……今夜は自分にちょっと甘めの気分です。
ブルーノ・ムナーリ展
これは見に行かなくては。葉山だろうがどこだろうが。ブルーノ・ムナーリ展。
たぶん、自分が今までの人生の中で一番影響を受けたアーティストでありデザイナーであり教育者であり思想家、ブルーノ・ムナーリ。座右の銘は、彼が「木をかこう」の巻末に書いたこの言葉。
むかしの中国のえらい人が、いったそうです。
「完全なもの」は美しいが、ばかげている。
「完全なもの」をつくりあげたら、
あとはそれをこわしてしまえ、と。
すべてを動きの中で捉えること。言葉の意味性に対する懐疑。アートディレクションと触覚の親密な関係性。開かれたデザイン、ということ。新しい技術と人間性のあり方について。……等々、ブルーノ・ムナーリの作品や著作物から学んだことは数限りなくある。そしてそれらはすべて、現代のデジタル全盛時代のクリエイティブのあり方を50年以上も前から予見していたものだ。
ムナーリがつくった心優しい軽やかな「役に立たない機械」たち。無意識の中の想像力を刺激する「本に出会う前の本」たち。それらが一堂に会するとなれば行かなくてはならない。葉山だろうがどこだろうが。今年はムナーリの生誕110周年、没後20周年である。
GR 18.3mm f2.8 of GRⅡ
hole
武蔵野うどん
うどん好き、である。炭水化物全般が好きなのかもしれぬ。炭水化物の取り過ぎは健康に良くない。せめて分量は調節しよう。常々そう思っている。もうトシですから。
田無市に住んでいる知人から、国分寺に居るなら「小平うどん」に行くべし、と薦められた。行ってみた。びっくりした。こ、これは。……この太さはなんだ? この色はなんだ?
これは、むしろ「すいとん」に近いのではないか。水団。昭和30〜40年代に母親が何度か作ってくれたことがある。といっても、小麦粉こねてちぎって煮汁に入れるだけなんだけど。でも、歯ごたえがあって腹持ちがして、少年時代の好物だった。小平うどんはこれに近い食感だ。で、味がある。田舎蕎麦を食べたときのような滋味がある。これを肉汁に付けて食べるのがスタンダードなんだそうな。
なんのスタンダード? と国分寺在住の人に尋ねると、武蔵野うどんのスタンダートとのこと。武蔵野うどんはコシの強い手打ちうどん。江戸時代までは農村の晴れの日の食事。肉汁で食べるようになったのは明治以降、とウィキペディアには書いてある。
武蔵野うどんが好きなら、国分寺北口の「甚五郎」にも行くべし、といっしょに小平うどんを食べていたおふたりに囁かれた。
純真なワタクシはさっそく行ってみた。こちらのお店のものは麺はもう少し細めで色もそんなに茶色っぽくない。ところが、田舎蕎麦との合盛もできますよ〜という店員さんの悪魔の囁き。素直に合盛を注文してみた。当然分量はハーフ&ハーフかと思いきや、なんとそれぞれ一人前ずつ。つまり二人前の大盛であった。こ、これは無理だ。胃拡張になる。でも、おいしいので残すのは忍びない。どうしよう。……純真なワタクシは、あああ、けっきょく全部食べてしまった。胃の中が炭水化物だらけ。意識が朦朧とし始めた。午後の授業に差し支えそうである。
武蔵野うどん&蕎麦、恐るべし。
straw hat
Buddha
サヴィニャック!
時折、従来の広告のやり方にどうしようもなく興味が萎えてしまうときがある。イマドキ、商品や企業イメージをダイレクトにアピールしたところで、いったい誰が面白いと思ってくれるというのだ? ……なんて、不遜にも思ってしまうときが、ある。
でも、そんなとき、私はサヴィニャックを思い出す。すると、また改めて、ああ、広告っていいなあ、楽しいなあ、見ていると元気になるなあ、って思えてくる。
練馬区立美術館のサヴィニャック展に滑り込みで行ってきた。明後日日曜日で終了。
やっぱり、サヴィニャックはいいのである。彼の広告アイデアはとてもシンプル。描かれる人や動物たちが商品と直結している。登場人物がストレートに商品を指さしていたりする。そのダイレクトさがとても清々しい。
Elmar 5cm f3.5 L + M9-P
で、案の定、久しぶりにまたノルマンディーに行きたくなってしまったのである。
ドーヴィルとトゥルーヴィル。パリから2時間でTrouville – Deauville駅に着く。ドーヴィルの方はご存じ映画「男と女」の舞台の高級リゾート地。でも、オフシーズンのオテル・ノルマンディはなかなか枯れた雰囲気があって、これはこれでまたいいのである。で、もうひとつのトゥルーヴィル。こちらは庶民的な食堂がいっぱい並んだ漁師町。サヴィニャックが晩年住み続けたところだ。今では町全体が彼の美術館みたいになっている。……初めてドーヴィル&トゥルーヴィルを訪れたのは、あれは26歳の時だったか。ダバダバダー。vous avez des chambres?