naotoiwa's essays and photos

2017年04月



 燃費がいいのである。都内を普通にストップ&ゴーで走っていてリッター平均15キロぐらい。前の車の3倍である。おまけにディーゼルなのでリッターあたりのコストは前の車(ハイオク)の時の3分の2なのである。これは懐にやさしい。

 で、ディーゼルってどうなの?…確かにアイドリング時のエンジン音は気になる大きさである。振動もガソリン車よりは大きくて、ダッシュボードのどこかしらで共鳴するノイズが聞こえたりする。でも、トルクは厚いし、加速はかなりスムースだし、走っていて不満はまったくない。おまけにこの車、足回りがホント精緻に組みあがっていて、固めの乗り心地がブレのないハンドリングと相まって、運転していてかなり楽しい。シートも良く出来ているので疲れない。ドライビングアメニティってもう死語に近い言葉かと思っていたけれど、どうしてどうして。

 というわけで、車を替えてほぼ二ヶ月経過したところであるが、現在はほぼ毎日車に乗っている。

 最近は、若者のみならずシニア層でも車離れがかなり進んでいるようだ。(ひとりで何台もラグジュアリーカーやビンテージカーを所有する富裕層の方は別でありますが、、)都内で車を私有するのはコストパフォーマンス的にはメリットはないし、これから先の人生で交通事故を起こすリスクをゼロにしたいという人も多い。そして環境問題。ま、それらの理由はすべてごもっとも。でも、市井の車好きとしてもう一度ドライビングアメニティを味わうのも悪くない。そんなことを感じさせてくれるクリーンディーゼルなのである。

car




 二年前、まだ五十半ばになる前に会社を辞めておいてよかった。最近、つくづくそう思う。とても良い会社だったのだ。でも、あのまま安穏とあの場所に居続けていたら、将来ロクなことにならなかったのではないか。会社では仕事にも恵まれた。部下にも恵まれた。おおよその指示を出せば優秀な若者たちがほぼ期待通りの動きをしてくれた。それをマネジメントと称するのなら私にもそうした能力が少しはあったのかもしれぬ。でも、直感的に思ったのだ。この先、もっと年を取ってからは会社で培った中途半端なマネジメント能力なんぞまったく役に立たなくなると。これからはもう一度「個」の力こそがすべてだと。如何に自分のプロフェッショナリズムを維持し成長させていけるのか。それをメディア化できるのか。ジェネラルな能力だけではこの先70歳まで食ってはいけぬ。そう思ったのだ、直感的に。

 でもまあ、今でも時折昔のクセで、書類のコピーぐらい誰かやってくれないものかと思ったりするのだが、大学ではそんな甘えは通用しない。コピーは全部自分で取るのである。普通のコピーはコストが嵩むからリソグラフを使ってまずは製版するのである。授業開始前のスクリーンや音響のセッテイングも自分でするのである。(と言いつつ、ああ、またMacbookのミラーリングの調子が悪いみたいです、助けてくださいーとAVルームに電話しているワタクシ。)研究費の精算も自分自身でこまめにエクセル表に記入するのである。(ま、これは当たり前かw)

 年を重ねれば重ねるほど、全部自分でやるのである。それが正しい年の取り方なのである。

新緑

Kinoplasmat 25mm f1.5 + E-PM1


 新緑。


5ans-1
5ans-2

Lumix Macro 50mm f2.8 + GM1


 Bon anniversaire. Elle a 5 ans.




flower vase

Summicron-R 50mm f2 + ELPRO VⅠa + α7s


 flower vase.


canvas

Helios 44-2 58mm f2 + α7s


 canvas.




 ほんとうに良い小説というのは、ごくごく限られている。そう思う。魅惑的なストーリーテリング、そして匂い立つような文体。それらを兼ね備えている小説はこの世の中にさほど多くは存在しない。

 最近、職業が変わって(というか増幅・増量して)、読むべき書籍や目を通すべき文献の類いがあまりに多義にわたってきたせいもあるが、ふと空いた時間に、無性に良い小説が読みたくなる。時間が限られているので新しいものにチャレンジする余裕はない。その結果、ゼッタイに間違いのないものを再読することとなる。

 カポーティの小説は間違いなくそれに値する。「遠い声 遠い部屋」「夜の樹」もいいが、やはりここは基本中の基本である「Breakfast at Tiffany’s」だろう。かの映画以上に原作は素晴らしい。カポーティ34歳の時の作品である。そして今では、瀧口直太郎氏と村上春樹氏のふたつの翻訳が楽しめる。

Never love a wild thing. That was Doc’s mistake. He was always lugging home wild things. A hawk with a hurt wing. One time it was a full-grown bobcat with a broken leg. But you can’t give your heart to a wild thing. The more you do, the stronger they get. Until they’re strong enough to run into the woods. Or fly into a tree. Then a taller tree. Then the sky. That’s how you’ll end up. If you let yourself love a wild thing. You’ll end up looking at the sky.

 でも、(中略)

It’s better to look at the sky than live there. Such an empty place, so vague. Just a country where the thunder goes and things disappear.

 彼女が時々襲われる、ブルーな気分ならぬアカな気分(mean red)のことを説明している場面だ。それでも、ゴライトリーは旅を続ける。雷鳴がとどろき、ものごとが消え失せてしまう空虚な空の果てを。

 Miss Holiday Golightly, Traveling.



hand

Summilux 35mm f1.4 2nd + MM


 hand.




 大学というのはなんとも不可思議なところだ。廻りがみんな若い学生ばかりだと、なんだか自分もそちら側にいるような錯覚を覚えてしまう。三十余年もの時間が、いとも簡単に逆戻りする。壇上で話をしている現在の自分が、向こう側でメモを取っているかつての自分と重なり合う。

 キャンパスに向かう道が、その昔、よく通ったルートと同じだったりするのもタチが悪い。車の中で古い曲を流しながら、メロディを口ずさんでいるとますます区別が付かなくなる。車ごとタイプスリップしていく。もちろん今では、古い曲だろうとなんだろうと iPhone から bluetooth 経由で流れてくるのだけれど。




 そうして辿り着いたキャンパス近くの、鄙びた川が流れる土手の道を歩いてみると、桜は今が満開である。川面まで降りてみることにした。…誰もいない。ゆっくりと春の風が止まり、時間も止まる。

野川

Canon S120

keep clean

GR 18.3mm f2.8 of GRⅡ


 keep clean.


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