ハロウィーンの夜である。風もないし昨日ほどには寒くない。ヨーロッパみたいに空気が乾燥した秋の夜。六本木ミッドタウンの富士フィルムスクエアに牛腸茂雄展を見に行った。一見何気ないポートレート、自然な構図のコンポラ写真。でも、そこには見るひとと見られるひと、自分と他人、じっと見つめていると次第に息苦しくなるような緊張感が潜んでいる。例の双子の姉妹の写真なんてまさに日本のダイアン・アーバスだ。
見終わってからしばらくの間、ミッドタウンの中を散策することにする。ブリッジを渡ってリッツカールトンまで行く。その後、いくつかの洒落たレストランやブティックを巡る。
六本木ミッドタウン。ここはなんて特別な場所なんだろうといつも思う。敷地内の空気が、香りが違う。なにか特別な空調でも施してあるのだろうか。そして、照明が違う。すべてが完璧にソフィストケイトされて上質なのである。もちろんそのためにコストが怖ろしく高く設定されているはず。よっぽどの資産持ちじゃないとここのレジデンスには住めない。東京に大地震が起きたとしても建物の耐震は完璧だし、各戸にそれぞれ備蓄倉庫が用意されていて一ヶ月ぐらいは問題ないのではないか。そんなことを思いながら六本木通りに戻る。西麻布まで歩くことにする。
ヒラリーとトランプのマスクを被ったカップルが歩いてくる。体中から流血した女の子たちが徒党を組んで歩いてくる。今夜はハロウィーンの夜である。