2016年06月
poncho
くさむら
夜明けからずっと雨が降り続いている。窓の向こうははるか彼方まで白く煙っている。昨日予約は入れてみたもののこの天気だ。キャンセルしようとも考えたが、お昼に近づくにつれてようやく少しずつ雨脚が弱まってきた。11時半、予定通り車でその店に向かう。道の両側には雨に濡れそぼった色とりどりの紫陽花が咲いている。青いのは酸性、赤いのはアルカリ性、真っ白な大輪の紫陽花もある。林道に入ってわさび畑をいくつか巡る。春でもないのに、まだ雨はあがってもいないのにウグイスがホーホケキョと啼いている。
112号線を左折して坂を登ると白い門扉が見えてきた。車を止めて階段を上り木の扉をノックする。「いらっしゃいませ」…扉の向こうはふつうの家の玄関だ。でも、食欲をそそるバルサミコソースとトマトソースの匂いがぷんとする。「お好きな席にどうぞ」…他に客はいない。ふだんでも二組までしか予約を入れないという。今日は平日で、なおかつこの雨である。
テラスに面したテーブル席に腰を下ろす。室内とテラスを隔てる窓には古風なレエスのカーテンが引いてある。ゲインズブルグの古いレコードが無造作に置かれている。

素敵な飾り棚がある。その扉のひとつひとつを眺めているうちに、なにやら不可思議な、でも妙に懐かしげな物語の中にゆっくりと引き込まれていく。

ビストロくさむら。伊豆高原八幡野にあるスペイン料理の店。スペインとフランスの国境近く、ピレネー山脈山麓のセルダーニャ地方で修行をされた田島シェフの店。店は絵本画家、田島征三氏のアトリエを改装して作られたもの。前菜からスープ、メインディシュ、デザートに至るまで、ランチタイムでもじっくりたっぷりと時間と手間をかけた料理を満喫できる。

all photos taken by Sonnar 35mm f2 of RX1
Hepburn
lion
garbage box
半夏生
断崖
遠望
フィルムグレイン
どんなにデジタルカメラの画素数が上がろうと、どんなに秀逸な非球面レンズが発売されようと、これからもずっとフィルムカメラにオールドレンズを付けて撮影し続ける、と思う。
戦前のレンズは周辺は収差で流れ光量の落ちも激しい。でも、その分だけ中心部分が浮き立ち、そこになにかしら秘密めいた物語が隠されているような雰囲気を醸し出す。そして、フィルムグレイン。この独特の化学の粒子が空気感に色っぽい傷(キズ)を付ける。
被写体は、山下公園から眺めるホテルニューグランド。ここにはマッカーサーズ・スィートがある。ナポリタン、ドリア、プリンアラモード発祥のホテルでもある。ま、それはさておき、ニューグランド。まずもってホテルの名前がいい。そして、このロゴの書体がいいのである。

Summar 5cm f2 L + Ⅱf + TX400