naotoiwa's essays and photos

2016年01月

ruined

Triotar 75mm f3.5 of Rolleicode Ⅱ + PN160NS


 ruined cottage.




 旧電通築地本社ビルが売却されて早や一年。新入社員で会社に入って以来20年お世話になったビルである。当時からずっと通っている歯科医院がこの近くにあるので今でも定期的にこのビルの前を通る。

「13階大ホールにお越しください」

 数回にわたる入社面接の後、電通から内定通知が電報で届いた。文面は「〇月〇日、〇時〇分に電通築地本社ビル、13階大ホールにお越しください」…そうやって私の会社人生は始まった。愉快な会社だった。たくさんの滋養を身につけさせて貰った。あれから三十年。Trente ans se sont déjà écoulé. Le temps passe vite.

 dentsuロゴも取り外され、1960年代、丹下健三の名建築もあとは解体を待つばかり。…カメラを向ける。付いているレンズは昭和レトロなスーパータクマーの55ミリ。

dentsu

SMC Takumar 55mm f2 + NEX-7



 コトバを生業にする職業柄からか、ただその響きやスペルの面白さだけで、意味も無く(?)コトバそのものを好きになってしまうケースがけっこうある。

 例えば、バラライカ。これ、ロシアの民族楽器の名前なのである。古風な弦楽器。



 スペルはbalalajka。ちなみにロシア語ではбалалайкаと書くらしい。でも、初めてこのコトバを聞いた時にすんなりと、薔薇ライカ、と刷り込まれてしまった。好きなものふたつが重なっている。薔薇とライカ。ライカはカメラのライカw。まあ、思い込むのは勝手なのであるが、薔薇とバラライカ、決して無関係というわけでもない。神戸に古くからあるロシア料理の専門店がある。その店名がバラライカ。で、ここで売っているジャムがローズジャムなのである。薔薇のジャム。ロシアンティーに入れるととてもおいしい。

 そんなこんなでバラライカ、けっこう気に入っているコトバのひとつなのである。

 検索したらこんなのもあった。



 ふたりだけのバラライカ、というのもなかなかいいフレーズではある。

skiing

Triotar 75mm f3.5 of Rolleicode Ⅱ + PN160NS


 skiing.


paper fortune

Planar 80mm f2.8 New C + Hasselblad 501C + PN160NS


 paper fortune.




 久しぶりに淡路町の神田藪蕎麦に行った。3年ぶりぐらい。火災後は初めて。新築された店内はずいぶんと広くなったが、平日の午後三時でもほぼ満席だ。メニューも変わってない。今の時期ならもちろん名物「かきそば」だろう。雰囲気も変わっていない。「ありがとうございます」ではなく「ありがとう存じます」「せいろそば」ではなく「せいろうそば」(蒸籠、だからたしかに正式な呼び方はせいろうなのである)
 例の大相撲の呼び出し風の注文確認の声も健在だ。ここは江戸の蕎麦とは何たるかを検証するには最適の店である。営業時間は昼時から夜までエンドレス。元来蕎麦とは決まった食事時に食べるものではない。いつ食べてもいいのだ。(だから平日の午後3時に満席というのは江戸の蕎麦屋らしき光景なのである)小腹が空いた時に少量食べる。(だからここのせいろうそばは量が少ない。大盛り不可。で、けっきょく2枚食べて1300円を超えてしまうのはいかがなものかとは思うが)蕎麦なんぞは日本酒のおつまみに過ぎぬ。天麩羅蕎麦が腹にもたれるのならいっそのこと蕎麦すら要らぬ。天麩羅だけでいい、ということで神田藪蕎麦にも「天抜き」がある。(それを言うなら「蕎麦抜き」なのではないかと常々思っているが)

やぶ


 ということで、本日はふたりで穴子の白焼きとせいろう2枚とかきそばを食べて5000円也。やっぱり高いな。高すぎる。確かに江戸文化の片鱗は堪能できるが、決して香り高い蕎麦というわけでもないし、それにやっぱり、あの風情ある建物を消失してしまった神田藪蕎麦というのはどうも。なんだか欲求不満が残ってしまい、そのまま「竹むら」に駆け込んだ。

 こちらは昭和5年築(亡母が生まれた年だ)木造三階建の美しい建築が現存する。ただ古いだけではない。とても手入れが行き届いている。九十度に折れ曲がった階段がイカしている。ここで食べる揚げたての揚げ饅頭と大人の味の粟ぜんざいは絶品だ。次回は最初からここに来て、雑煮+揚げ饅頭+あんみつコースにしようっと。

triste

Lumix 25mm f1.7 ASPH. + GM1


 je suis triste.


no face

EF 50mm f1.4 USM + Extension EF25 + α7s


 no face.




 ようやくなんとか出歩けるまでに回復したので、近くのお医者さんまで点滴を打って貰いに行った。おや、血圧も上がってますね。耳石が動いたからかもしれませんが、ストレスから来る脳の虚血症っぽいですねえ。でも、脳梗塞も脳腫瘍も同じ症状ですから、と脅かされて、すわ、MRIを受けに行くことになった。血中コルステロール高いし。そろそろこれを機会に検査しておいた方がいいだろう。もうすぐ55歳だし。
 行ったのは銀座にあるメディカルスキャニング。ここ、入っている建物からしてなんだかバブリーなのである。一階のエレベーターフロアからしてすんごいシャンデリアが下がってる。(ちなみにこのビルには、佐賀牛のお店も入ってます。何度か来ました。せいろ蒸しうまい)で、2階の自動ドアを開けると、おお、すごい。サロンみたいな待合室。壁にはお洒落なリトグラフ。作家は村井正誠さん。先客が2−3人いた。みんななんだかバブリーな感じで、金に糸目を付けずゴージャスなドック検査に来ている感じ。(こっちは保険でお願いしてオリマス(^o^)
 完全予約制なのですぐにご案内。まずは再診。そしてロッカールームで着替え。金属系のモノはすべてここに置いていってください。かなり強い地場が発生していますので、みんなダメになってしまいますから、と脅かされる。(人間の体はダメにならないのか?)で、いよいよ最新鋭を誇るMRI室へ。ここの扉にも改めて貼り紙がしてある。「強い磁場が発生しています」と。(くどいようですが、ほんとうに人間の体はダメにならないんでしょうね??)
 若い技師がクールに説明をする。検査は約20分間です。動かないでください。なにかあったらこれを握りしめてください。そして、大きな音が出ますのでこの耳栓をしてください。そう言って、ヘッドホンみたいな耳栓を被せられる。
 で、いよいよ始まった。脳のMRI。初めての経験である。…もちろん痛くも痒くもないし、目を瞑っていれば閉所恐怖感に襲われることもないが、確かにすんごい大きな音が出る。頭痛がして頭重で、ただでさえ耳鳴りがしているのに、これは堪らぬ。数分でまた吐き気がし始める。でも、20分間はじっとしてるしかないし。…
 ということで、ま、音楽として楽しんでやろうと前向きに考えることにした。そう言えば、これ、ケミカルブラザーズのエレクトリック音に似ていなくもない。



 そうそう、この曲に似てるのだ。come with us! イエーイ。…ということで、20分間なんとか持ちこたえた。
 着替えをして待合室で待つこと20分。ふーん、この洋画家の村井正誠さんって岐阜県の大垣市出身なんだ、ふーん、などと感心していたら、本日のMRI画像がCDロムになってもう手元に。専門医がダブルチェックで診断し、レポートを一週間後に主治医の方にお届けします、とのこと。

 以上、初めての脳MRIでありました。ま、なにもなければいいけど。Come with us!

mri



 めまいがなかなか収まらぬ。本を読もうにも今ひとつ焦点が定まらぬ。ベッドに横になりぼんやり音楽でも聴いているしかすべがない。
 久しぶりにビル・エヴァンスの73年のLive in TokyoのCDをセットする。このアルバムの中で好きなのは、もちろん名曲のMy RomanceやクールなT.T.T.Tも最高にイカすけれど、ダントツは Hullo Bolinas。ボリナス。サンフランシスコの先の小さな街。スモールタウン。かつてブローディガンが住んだ街。「西瓜糖の日々」の舞台となった街である。きっとそこには心が正しくて心がちょっと弱い人たちだけが静かに暮らしているに違いない、などと妄想しつつエヴァンスのピアノソロを聴く。Hullo Bolinas。
 そしてもう一曲が、When Autumn Comes。クレオ・フィッシャーの曲。なんと不安定で孤独で、そしてリリカルなメロディなんだろう、と改めて思う。


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