遊学
うちの学生さんが、今日から一年弱ひとり暮らしをすることになりました。下宿先はパリの15区の屋根裏部屋です。狭いかもしれないけれど(狭いでしょう、きっとw)エッフェル塔まで徒歩10分。羨ましい限りです。できることなら、自分が30数年分若返って代わりに住んでみたいものだと思います。
今回の留学は、本当にいろんな人のご好意に支えられてのこと。みなさんへの感謝の念を忘れないでください。フランス語と英語だけの授業は大変でしょうが、なんとか乗り切ってください。その上で一年弱の旅を満喫してきてください。
昔は、留学のことを遊学と言ったようですね。今では、遊学なんて言うと勉強もせず遊んでばかりいるみたいに聞こえますが、そうではないと思います。ずっと定住するわけではないのですから。日常と非日常の間を行き交う一年なんですから。ちょっと長めの旅であることにかわりはないのですから。だから、遊学でいいと思います。
いつも柔らかい感性で、新しい街、新しい友人、新しい学問、新しい本に向かい合ってきてください。そうすれば、たくさんの未来の可能性が自然とあなたのところに引き寄せられてくることでしょう。
そのためにも、いつも心を自由にしていてください。(自由になるお金はあまりないと思いますが。父に甲斐性がなくてごめんなさい)自由と、生涯かけて没頭できる何かと、自分の能力だけを信じるタフさを持ち続けてください。それがあれば、遊べます。お金がなくとも、どのようなしがらみがあろうとも、心の中で遊べるはずです。
今日は、そんなこれからのあなたの移動祝祭日ということですね。
Bon Voyage.
crosses in the sky
ピエトラ・パエジナ
恵比寿のLIBRARIE6でやっている「澁澤龍彦没後30年展」を見てきた。「石の夢」と題して、ミケランジェロやプルドン、そして澁澤龍彦さんが愛したトスカーナのピエトラ・パエジナ(PIERTA PAESINA)が何点か展示されていた。そして、澁澤さんの書斎にあったであろう蔵書の数々。サド、プルドン、ロジェ・カイヨウは言うに及ばず、ブルーノ・シュルツ、ユイスマンス、ランボー、セリーヌ。日本の作家だと瀧口修造、金井美恵子、西脇順三郎の名前が目に付く。いずれも、二十代の頃に(もちろん澁澤さんの影響を受けて)読みあさった本ばかりだ。思い起こせば、ずいぶんと澁澤龍彦にかぶれた二十代を過ごしたものである。ローマに行けば人工廃墟見たさにボマルッツォまで、南仏に行けばサドの生家が見たくてわざわざラコストまで足を運んだ。その澁澤龍彦さんが亡くなって早30年が経つ。。
さて、ピエトラ・パエジナ(風景石)。はじめて見たひとはこれが天然の石であるとはにわかには信じられないだろう。古色蒼然とした中世のフレスコ画のようであり、マニエリスム期に作られた細密画のようでもある。自然の力だけで、かくも精緻で人工的(に見える)ランドスケープが描き出されることの不可思議さ。悠久の時を静謐に閉じ込めた、まさに「石の夢」である。
attention
狛犬
生まれ変わり
佐藤正午さんが直木賞を受賞した。昔からのファンとしては嬉しいかぎり。
受賞作「月の満ち欠け」は生まれ変わりがテーマ。佐藤正午さん得意の文芸サスペンス。でも、そうしたプロットが全くなくても、大学生の三角くんと人妻の瑠璃さんの恋愛ものとしてだけでも、この小説、読みごたえ十分。
そして、無性にまた、あの懐かしの早稲田松竹で映画が見たくなってくる。
それにしても。60歳を過ぎての直木賞受賞はめちゃくちゃカッコいい。おめでとうございます!