naotoiwa's essays and photos

on the beach in autumn

Summilux 35mm f1.4 2nd + M10-P


 秋の海水浴場。







 路地裏を歩いていたら、キンモクセイの優しくて甘い香りがした。毎年この季節にこの香りを嗅ぐ度、私は九鬼周造のあのエッセイの一節を想い出す。

「今日ではすべてが過去に沈んでしまった。そして私は秋になってしめやかな日に庭の木犀の匂を書斎の窓で嗅ぐのを好むようになった。私はただひとりでしみじみと嗅ぐ。そうすると私は遠い遠いところへ運ばれてしまう。私が生れたよりももっと遠いところへ。そこではまだ可能が可能のままであったところへ。」

九鬼周造『音と匂 ―偶然性の音と可能性の匂―』より





 2022年の大河ドラマは三谷幸喜さんの脚本による『鎌倉殿の13人』、北条義時が主人公である。

 若い頃から歴史好きで、特に平安末期から室町にかけての中世史には目がない。20代の後半に鎌倉に住んでいたこともあって、鎌倉周辺の源氏、北条氏ゆかりの場所はほとんどすべて見て回った。ちなみに当時住んでいたのは北条得宗家屋敷跡である宝戒寺のすぐ近くで、高時腹切りやぐらのある東勝寺跡は毎週末の散歩コースだった。

 でも、幕府滅亡後の北条氏については今まであまり関心がなく、今回改めていろいろ調べてみたのだが、なんと故郷帰りをしているのである。高時の生母である覚海尼は北条氏発祥の伊豆韮山に戻り、その元来の屋敷跡に円成寺を建立している。すぐ近くには狩野川が流れ、なんとも風光明媚な場所である。

狩野川


 北条義時が得宗と呼ばれ、第二代執権の職に付いてから鎌倉幕府が滅びるまでに約130年の月日が流れた。一族は滅亡し、その冥福を祈るための尼寺が伊豆地方の一豪族に過ぎなかった頃のかつての場所に建立された。こうして運命は振り出しに戻るのだ。円成寺跡には、彼岸花が咲いていた。

彼岸花


all photos taken by Elmarit 28mm f2.8 2nd with stopper + M10-P + Color Efex Pro



 最近は、とんとオールドカメラ&レンズを購入する機会もなくなったが(ライカを筆頭に値段が高騰しすぎで手も足も出ない)、アクセサリーの類いだけは細々と集め続けている。特に外付けファインダー。ライカもツアイスも、はたまたフォクトレンダー名のコシナのも、みんな工芸品のような造りであり、そしてなにより、覗いた時の世界の見え方がカメラに内蔵されたファインダーとは別格なのである。シャッターを切る必要を忘れてしまうくらい、ただただファインダー越しにこのまま世界を眺め続けていたい気分になってしまう。

 でも、ローライのような二眼レフだけは別。二眼の良さは、あの上から覗く左右逆転のウエストレベルファインダーにある。それをわざわざプリズムファインダーに取り替えて、というのは今まで発想したこともなかったのだが。

 馴染みの中古カメラ店で、かなりきれいなプリズムファインダーを見つけてためしに付けてみたところ、これがまあ、よく見えるのである。大きなスクリーンでビシッとピントを合わせられるのだ。やっぱり正像はいい。

 金属のカタマリでかなり重いし、デザインも頭でっかちのツッパリヘアースタイルみたいなのだけれど、それはそれでまたカワユクもあり、ということで、このところプリズムファインダーにすげ替えたローライ3.5Fがお気に入りなのである。

rollei

Dallmeyer 1inch f1.8 + E-PM1


夢の跡

Elmarit 28mm f2.8 2nd + M10-P


 夢の跡。


コスモス

Elmarit 28mm f2.8 2nd + M10-P


 秋桜。




お彼岸も今日で明ける。おはぎを食べよう。
きなこもいいが、やはり、あずきが基本でしょ。
萩の季節のぼたもちだから、おはぎ。
で、お米は、はんごろしが好みです。
あずきも、はんごろしのつぶあんです。
はんごろしかみなごろしか。
いくらなんでも、ぶっそうな言い方ですよね。
誰が最初に言い出したんだろ。


おはぎ

Kinoplasmat 1inch f1.5 + E-PM1



 時折、無性に小川洋子さんの初期の小説を読み返したくなることがある。『完璧な病室』とか『薬指の標本』、あるいは先日ブッカー国際賞の最終候補にも選出された『密やかな結晶』などなど。たぶん、あのロマネスクな抽象性や、あのカフカ的な不条理性が無性に恋しくなるからだと思う。

 いま、英文のペーパーバックで『密やかな結晶』(英文タイトルは『the memory police』)を再読しているのだけれど、改めて、彼女の小説はどれも日常的な湿気た風土から完全に解放されていると感じる。だから「物語」がピュアなのだ。

 『the memory police』。記憶狩り。中世的な話である。近未来的な監視社会の話でもある。あっという間に季節が巡りすぎてしまった後の、晩秋の乾いた絶望を感じさせる話である。

見ざる

Summilux 50mm f1.4 1st + M10-P


 見ざる聞かざる言わざる。


pig

P.Angenieux 12.5mm f1.8 Dmount + Pentax Q-S1


smelling.


このページのトップヘ