naotoiwa's essays and photos

山の神

P.Angenieux 35mm f2.5 + M10-P


 山の神。


馬

GR 18.3mm f2.8 of GRⅢ


 エルメスの広告写真にでも使いたい風景。




 ようやく梅雨もあけ、いよいよ盛夏である。ビーチはどこも、ひとひとひとの波である。「世の中、夏休みなんだね〜」と海の家のテントの中で彼女がつぶやいている。「8月に入ると、夏休み、あっという間に過ぎちゃうんだけどね」

 例によって、今年もサーファーの女ともだちとこうして海に来ているのである。「会うの、ものすごく久しぶりな気がする」「一年ぶり。毎年恒例」「いや、一年以上会ってなかったんじゃない?」「あ、去年は6月に会った。梅雨明けが異常に早かったからね。それが今年はもう8月」「一年と二ヶ月ぶりってこと?」「そう」

 「最近、どう?」「……トシだね」「らしくないなー、なんかあった? 自信喪失?」「いや、まだ全然ズレてないと本人は思っているんだけどね」「なら、それでいいじゃん」「でもねえ」「でも?」「自分がいいと思ってやってることと、まわりがそれを理解してくれているかのギャップというか」「そんなの、誰だって、どんな時だってあるよ」「ある。でも、トシを取るとそのギャップがひどくなるみたいなんだ」「なんで?」「なんでかわからないけど、時には180度違って相手に見られていたりすることがある」「180度? それって正反対ってこと?」「ああ、で、ひっくり返る」「ひっくり返る?」「ラストで、自分でいいと思ってやっていたことが、オセロゲームみたいに、どんでん返し」「……ううむ、それはキツいか」

 「アタシももう若くはないけどね、そういう経験は、ないなあ」「僕より二十も若いからね」「そういうことじゃないと思うけど」「ん?」「年齢には関係ない」「じゃあ、なんだろう?」「……たぶん、ストーリィ、つくろうとし過ぎなんだよ」「ん?」「いろいろ順序立てて積み上げすぎなんだよ、きっと」「……」「正しく積み上げれば積み上げるほど、逆にどこかの切り換えポイントひとひねりで、ゴロッと、そのまま全体がひっくり返る」「うむ」「ワタシみたいなおバカはさ、そういうの、やりたくてもできないからさあ。万事が思いつきのつぎはぎだらけ。でも、だから、切り換えポイントひとつぐらいどこかでひねられても、どうってことないw」「……なるほど」

 彼女のひと言で、なんだかスッと腹落ちがした。

 海岸から五十メートルぐらい沖合で、波に乗り損ねたサーファーが空中でもんどり打って一回転しているのが見えた。鮮やかなオレンジ色のパンツをはいている。しばらくして海面にせり上がって来た彼はボードに捕まりながら海岸で待っている仲間に向かって手を振っている。とても楽しそうに。

 僕の隣に座っているサーファーの女ともだちも鮮やかなオレンジ色のビキニを着ている。全身きれいに小麦色に焼けている。髪はソバージュ。

 「ワタシももうあと二年で四十の大台だよ。いつまでも肌なんか焼いてる場合じゃないんだけどね」「キミは、全然変わんないよ」「お世辞はいいから。……最近はシミが消えないからね、もうやけくそ。上書きして焼いてごまかしてんの」と彼女は笑った。笑ったときの目尻のしわが去年よりもほんのちょっとだけ深くなったような気がしたけれど、それは、彼女の深みがまた一年分増したということだ。すらりと伸びた長い脚から、今年も甘いココナッツオイルの香りがしている。



 
連載小説も今月で5回目となりました。

 真夏の八月篇は、海ありプールあり流しそうめんあり、そして蚊帳あり、です。


花火


 
こちらからどうぞ。


*ここまで、毎月一篇ずつ書き連ねてきましたが、ひょっとすると、この夏、
一気に書き上げてしまうかもしれません。その時は、まとめてマガジン形式にする予定です。



 8月である。台風も去ってようやく梅雨が明けた。去年より一ヶ月も遅い。というか、去年の梅雨明けが異常に早すぎたのだけれど。でも、そのせいか、35度を超す猛暑日なのに、明け方には蜩がもうかまびすしく鳴いている。盛夏と晩夏がいっしょにやってきたみたい。まさに、太宰治が『ア、秋』で書いていることだなあとしみじみ思う。

 秋ハ夏ト同時ニヤッテ来ル。と書いてある。
 夏の中に、秋がこっそり隠れて、もはや来ているのであるが、人は、炎熱にだまされて、それを見破ることが出来ぬ。耳を澄まして注意をしていると、夏になると同時に、虫が鳴いているのだし、庭に気をくばって見ていると、桔梗の花も、夏になるとすぐ咲いているのを発見するし、蜻蛉だって、もともと夏の虫なんだし、柿も夏のうちにちゃんと実を結んでいるのだ。
 秋は、ずるい悪魔だ。夏のうちに全部、身支度をととのえて、せせら笑ってしゃがんでいる。


jizoh

Summicron 35mm f2 2nd + MM

eyes

GR 18.3mm f2.8 of GRⅢ


 その瞳で見つめられると、、


山百合

GR 18.3mm f2.8 of GRⅢ


 山百合の、甘い濃密な香り。




続編、楽しみ。うちの犬も、前の犬の生まれ変わりだったりして。




 トレンディドラマ。現在では死語に近いだろう。かつて民放各局が人気俳優、女優を起用して放映したオシャレな夜9時枠の恋愛ドラマのことである。代表作は、やはり「東京ラブストーリー」だろうか。平均視聴率20%、最終回は30%を超えた。脚本は坂元裕二さん。30年近く前の作品だが、今でもロケ地松山の梅津寺を訪れるファンが絶えないと聞く。私もオンタイムで「東京ラブストーリー」を見ている世代であるが、でも、同じ坂元さんの脚本ならば、2004年の「ラストクリスマス」の方が好きかもしれない。

 トレンディドラマの基本はメロドラマ。甘くて切ない恋の駆け引き。「東京ラブストーリー」も「ラストクリスマス」もメロメロのメロドラマであるが、紆余曲折の後、すべてがハッピーエンドで終わる「ラストクリスマス」の方がより安っぽくて劇画チックなメロドラマの真髄を感じるからだ。どちらも主演が織田裕二だし、主人公の勤めている会社名も同じ「ハートスポーツ」。同じようなシチュエーションやセリフも散見される双子のような作品である。でも、主人公の描き方が正反対だ。「ラストクリスマス」の方の織田裕二には優柔不断さがみじんもない、学生時代からの恋人よりも、四ヶ月前に出会った新しい恋を躊躇なく選ぶ。で、その選ばれた恋人が矢田亜希子演じる青井由季。このキャラ設定がタマラナイ。清楚な美人、でも、彼女はもとレディース。時折出る元ヤン言葉がタマラナイ。

 さて、メロドラマであるからには音楽が大切。メロドラマのメロとは音楽のことである。ゆえに、トレンディドラマは必ず主題歌とセットになっている。「東京ラブストーリー」には小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」、「ラストクリスマス」にはもちろんワムの同名の名曲である。そして、素敵なサウンドトラック。




 複雑なストーリーテリングに疲れたらメロドラマがいい。メロドラマの安っぽさが心地よい。ちなみに、クルト・ヴァイルが作曲した「三文オペラ」にもメロドラマと題したシーンがある。




 久しぶりにドラマ「ラストクリスマス」なんぞを想い出したものだから、無性にスキーがしたくなってしまった。台風の後はいよいよ梅雨明け、本格的な夏到来だというこのタイミングでw




 先日、大学の授業のゲスト講師に、私の大好きな(個人的にファンでもある)広告クリエーター&ミュージシャンの方に来てもらった。サスガの授業だった。受講生たち全員、男女問わず目が♡になってる。で、帰りにその方を車で最寄り駅まで送っていったところ、「オオイワさん、意外にスピード狂なんすね」とのこと。「加速グゥワングッワン来ますね」「この車、ディーゼルなんだけど」「ディーゼルのオートマでこの走りは……」とのこと。で、そのクリエーターの彼、即興でワタクシのサウンドロゴを歌詞付きで作ってくれた。それによると「いがいとスピード狂、わりとスピード狂、でも黄色信号ではちゃんととまるオオイワナオト」、だそうだ。自分ひとりで走っている時はあんまり意識したことはないけれど、なるほど、そう言われればその通りかも。「あなたの車の助手席に乗ってると、急発進急停車で首がむち打ち症になりそう」と誰かに言われたことも何度か。……

 はい、意外とスピード狂なのであります。わりとスピード狂なんです。車もそうですし、スキーの時もそうかも。先日、出張先で久しぶりにマニュアルシフトの車に乗ってヒール&トゥーで吹かしたりしてみたが、やっぱりアレ、快感なのである。

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