naotoiwa's essays and photos

rose

Summilux 35mm f1.4 2nd + M10-P


 roses.




 最近、例の2000万円問題に影響されたわけでもないだろうが、柄にもなく老後の人生設計をシミュレーションしたりしている。えっと、65歳から30年生きるとして、……なんて考えること自体、人生100年時代とやらにまともに感化されている。オレ、真剣に長生きしよう、なんて考えてるのかも。らしくない。

 いったい自分は、これから先、何歳ぐらいまでの自分を許せるのだろう? 容姿的なこと、身体的なこと、人間関係的なこと、そしてなによりも思考的なこと、思索的なこと。

 いきなり10年後、20年後になって慌てふためくことのないように、毎年毎年一年ずつ、老いていく自分にケリを付け続けていかなくてはと思う。

 カモメはいいなあ。とても自由そうだ。

カモメ

Summilux 35mm f1.4 2nd + M10-P

観想生活

Summilux 50mm f1.4 ASPH. + M10-P


 観想生活。


雲と鉄

GR 18.3mm f2.8 of GR Ⅲ


 鉄と雲。



 早いもので、今年は亡父の23回忌、亡母の7回忌にあたる。久しぶりに実家で法要を行った。ふるさとの街は昔とすっかり変わってしまったようで、その実、近くの路地には小さかった頃に嗅いた匂いがまだそのまま残っていたりして、いつもながらに困惑する。そして、身の丈の現実を思い知らされる。
 いつまでも若いつもりでいろんなことにチャレンジし続けているけれど、その実自分はすでにもう50代も後半、あと2年もすれば還暦を迎えるわけで、人生100年時代なんて言っているけれど、仮にそれが現実になったとしても折り返し地点はとうに過ぎている。今の60代は元気だし70歳過ぎても働きたい。自分もそのつもりで頑張っているものの、仮に寿命が飛躍的に伸びたとしても、成人病になる確率が大幅に減少したという話はあまり聞かない。健康でなければ、なにが定年延長なにが生涯現役、100年人生であろうか。
 両親の位牌の前でそんなことをアレコレ考えながら、ふたりは自分の老いに対してどのように感じ、どのように対処しようとしていたのか、そのヒントを教えてもらいたくて耳を澄ませていたのだけれど、写真のふたりは昔のまま(プリントされた写真は少し色褪せてきているが)微笑んでいるだけだった。

 東京に戻りまた日常生活が始まった。隣には今年7歳を過ぎた犬がいる。人間で言えば50代。頭のあたりの毛に白髪も交じり始めている。彼女にとっては人間が1日過ごしている間に7日間も過ぎてしまう計算になる。1日が1週間。毎日が我々の7倍楽しくなければ彼女の人生は割が合わない。そんなこんなを思うと、なにやらせつないばかりの梅雨の一日である。

neu

GR 18.3mm f2.8 of GRⅢ

湯治中1

湯治中2

GR 18.3mm f2.8 of GRⅢ


 湯治中。


教会

GR 18.3mm f2.8 of GRⅢ


 日本でこんなに可愛らしくて素敵な教会に巡り会えるとは。@新潟



 今の時期、森の中は甘い香りに包まれている。ジャスミンの花。そろそろ白い花も黄ばんできて、むせ返るような匂いである。ジャスミンはつる性で、さまざまな大木に巻き付いて成長している。ぎゅっと締め付ける。あの芳醇な香りを焚きしめながら。

jasmine

GR 18.3mm f2.8 of GRⅢ



 まだ五月だというのに、今週末、気温は30度を超え35度になるところもあるとのこと。あっという間に夏到来である。というわけで、髪の毛を切ることにした。さっぱりと。

「サイドは耳にかからないように。で、前髪も揃えちゃおうかと」と言うと、いつも担当してくれている美容院のお姉さんは、「じゃ、マッシュくんにしちゃいましょうか?」と乗り気である。マッシュルームカット?「攻めましょう。おわんみたいにしちゃいましょうよ。ウフフ」……
「あ、いや、サイドはボリューム付けたくないんで、マッシュルームカットはご勘弁」「でも、前髪は揃えるんですね?」「はい、眉の上で」「パッツン、でいいんですね」「はい、パッツンでお願いします」

 ええっと、心の中で想定しているのは藤田嗣治のおかっぱカットなのである。最近では仏文学者で小説家の小野正嗣さんがそれっぽい髪型をしている。それらを意識してのオーダーなのである。

 ザクザクザク。ジョキジョキジョキ。……髪の毛のボリュームが半分ぐらいになった。で、最後に前髪をチョキチョキチョキ。彼女はとても手際がいい。感覚派で天才肌である。ものの10分で仕上がった。「はい、できました!」……鏡を見る。眼鏡をかける。土台が違うのはいたしかたないけれど、髪型だけはレオナール・フジタと相成った。

「お似合いですよ」(お世辞でも嬉しい。ありがとう)彼女が鏡の中を見つめながら教えてくれる。「最近の若者はこれをオン眉と言います」「おんまゆ?」「眉の上のところで切りそろえるからオン眉」

 ひとつ知識が増えました。パッツン、オン眉。



 今日は亡父の誕生日である。大正14年生まれの戦中派。令和元年の今年に生きていたら94歳である。義父がちょうど同い年で健在なのだが、この実父と義父、あまりに性格とライフスタイルが違っている。実父の方は運動万能、出歩くことが大好き。情に熱くて、短気で喧嘩っ早い一面も。

 そのせいか、若い頃に会社の上司と喧嘩して、それ以来フリーランス。71歳で亡くなるまでずっとひとりで仕事をしていた。彼がちょうど今の私の年齢と同じ頃、ようやく私も社会人として独立したのでそれ以降はスネをかじることもなくなったが、58歳から亡くなる71歳までの間も、たったひとりで仕事をし母親を養い続けた。年を取ってからもファッション関係の仕事をずっとひとりで続けるというのがどんなに大変だったことか。仕事の相手はみんな若い人ばかり。センスの古さを馬鹿にされて、屈辱的な思いをすることもあったろう。いや、そうでもないか。彼はよく仕事の接待にゴルフを利用していたが、企業の若い担当者をゴルフ場で遊ばせておきながら、ちゃっかり自分でベスグロ賞とか獲得していたし、若い人の中ではゴルフを教えてくれる大先輩として人気者だったのかもしれぬ。

 私は彼が36歳の時の子どもであり、彼が亡くなった1997年、私は同じく36歳になっていた。なにやら因縁深いことである。まあ、いずれにしても、少しばかり人生を生き急いだことは否めない父親。寿命の面でも短気すぎたのかもしれない。

 そんな彼が生まれた5月19日。昔も今も、町は新緑の、そして花々の香しい匂いで満ちている。今が盛りのジャスミンの花の香を楽しみながら、しばし亡父のことを想い出す。

jasmine

GR 18.3mm f2.8 of GRⅢ


 

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